第18回大阪ヨーロッパ映画祭

第18回大阪ヨーロッパ映画祭 ラインナップ決定

~世界の今に、ここで出会う~


【日程】
2011年11月3日(木・祝)〜 2011年12月9日(金)
エルセラーンホール(ホテルエルセラーン大阪)、梅田芸術劇場、
梅田ブルク7、イーマ、兵庨県立美術館ほか
ヨーロッパ最新映画初上映:11月18日(金)〜23日(水・祝)

【映画祭について】
日本とヨーロッパとを結ぶ映像文化の祭典、「大阪ヨーロッパ映画祭」を、今年も11月に開催いたします。
今年の映画祭には次の7つの特色があります。

I. 「ダンス・3D」
ドイツ生まれの世界的舞踊家・振付師、ピナ・バウシュ。2009年に亡くなった彼女の人生の軌跡とヴッパタール舞踊団の名作を、名匠ヴィム・ヴェンダース監督が3Dで撮った最新作「Pina 3D/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」を、オープニング作品として上映します。

II. 「映画祭のキンダーガーデン」
毎年、映画祭に行きたくても子どもがいるので行けない!とのご意見があります。そこで、今年のキッズイベントは映画祭会場にて開催します。パパもママも、映画をゆっくりとご鑑賞いただけるようになりました。子どもたちには、イタリア・トリノ市との国際交流企画および、映像の仕組みを体感できる“キッズプログラム”を用意しております。

III. 「美容師」
ソウル国際女性映画祭でオープニング上映を飾り、ベルリン国際映画祭にも特別招待された、ヨーロッパの大ヒット作「ヘアードレッサー(仮題)」を、本映画祭でも特別招待作品として上映します。今年の映画祭名誉委員長であるドイツ人女性監督ドリス・ドリエが、“美容師”をテーマに撮影した最新作です。

IV. 「イタリア」
大阪・ミラノ姉妹都市提携30周年と、イタリア統一150周年を記念し、イタリア・ミラノに関する作品を特集上映します。また、ミラノより、イ・ソリスティ・ロンバルディ楽団所属のデュオを招聘し、世界初公演となる“アニタ・ガリバルディ”に生演奏を合わせるコンサートも実施します。

V. 「環境」
環境問題を扱った、食文化・石油製品・電気エネルギー・原発などのテーマに関するヨーロッパ映画を上映します。また、日本・ヨーロッパの専門家を招いたシンポジウムを実施し、環境問題について今一度考える機会を作ります。

VI. 「フィンランド」
今年はフィンランド映画を特集上映します。日本人にはなじみの少ないフィンランド映画ですが、今年はその映像の美しさと、現在のフィンランドを、さまざまな角度からご堪能いただけます。

VII. 「希望の光」
映画祭で上映したヨーロッパ最新映画の中から、来場者の投票により選ばれた作品を、東北地方の被災地にて上映します。“映画は人に感動と希望と夢を与える。関西から東北へ、映画を通じて希望の光を”。

【関連イベント】
このほかにも関連イベントとしまして、来日ゲストが関西圏の専門学校や大学で講義を行う「映画塾」、毎年大好評の「世界のCMフェスティバル」、「写真展」なども開催いたします。

第18回大阪ヨーロッパ映画祭 公式ホームページ http://www.oeff.jp/

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カテゴリー: 映画祭 | 特 集

2011年11月1日 by p-movie.com

『わたしを離さないで』著者カズオ・イシグロ記者会見

この命は、誰かのために。この心は、わたしのために。


著書「日の名残り」で英国文学の最高峰とされるブッカー賞を受賞し、同作の映画化を経てその名をますます英国民の間に浸透させた作家カズオ・イシグロ。もともと日本(長崎)で生まれ、5歳のときに父の仕事の関係で渡英した経歴を持つ彼が、今や“英国が誇る”有名作家にまでのぼりつめて久しい。

その繊細な表現世界は更なる高みへ。彼が2005年に発表した「わたしを離さないで」は、そのあまりに切ない状況設定、人物関係、そして登場人物の心象が、「日の名残り」を知らない若い読者たちの心をも魅了し、また、この作中に隠された“驚き”が世界中に静かな絶賛の渦を巻き起こしていった。

そして本作は、ついに映画化へ。

幼いころより映画という映像メディアに魅せられてきたイシグロ氏は、今回自らがエグゼクティブ・プロデューサーの役目を担い、自身の代表作を別次元へと昇華させるべく、いくつもの類稀なる才能たちとコラボレーションを遂げてきた。そうして完成した作品『わたしを離さないで』が3月26日より公開中だ。

公開を前に、約10年ぶりに来日(すでに英国に帰化している彼にとって日本は“帰国”の地ではないのだ)を果たしたカズオ イシグロ。ここに英国大使館で行われた記者会見の模様をお伝えする。彼が語る『わたしを離さないで』に込めた思い、そして映画の舞台裏とは―?

「本日はお集まりくださりありがとうございます。そして英国大使館の皆さま、この度は会見のためにわたくしを侵略(invade)させていただき、感謝申し上げます」

そんな茶目っけたっぷりの挨拶で会見は幕を開けた。日本語ではない。最初から最後まで英語通訳を介しての質疑応答となった。イシグロ氏にとって日本語とは、日本に別れを告げる5歳頃まで使っていた言語に過ぎない。今もなんとなくヒアリングは可能だそうだが、それも女性の声に限るという。どうやら彼の日本語耳は幼少期に母親が発していた声のトーンを基調としてできあがっているようだ。


【いちばん頭を悩ませた“状況設定”】

『わたしを離さないで』は、ひとりの女性介護士の目線を通して、過酷な運命、短い人生を精一杯に全うしようとする幼なじみ3人の、切ない愛と友情を描いた物語だ。

執筆にあたり、彼の頭を悩ませたのはその状況設定だったという。

「私はまず、数人の若者についての物語を書きたいと思いました。そして通常の人間は70~80年くらいの寿命であるところを、彼らだけは30歳くらいまでしか生きられない、という設定を作りだしたかった。では、どういうシチュエーションならばそれが可能になるのか。それをずっと考えていました」

主人公となる3人の男女は幼いころから寄宿舎で一緒に生活し、やがて“ある使命”のため運命を受け入れる日がやってくる。それは我々からしてみればあまりに哀しく、残酷だ。だがそんな彼らの人生にも、僅かながら幼少期、思春期、成熟期、そして老後といったものが存在する。読者や観客はやがて、本作で描かれる状況が実はこの世界に生きる我々と何ら変わらないことに気づかされるだろう。彼らのスピードがちょっと速いだけなのだ。イシグロは言う。

「人生とは考えているよりも短いもの。だからこそ、限られた時間の中で自分がいったいなにをすべきかを一生懸命に考え、行動してほしい。そういう願いをこめてこの作品を執筆しました」

この小説&映画は、まさにその「人生の本質」を伝えるための作品と言ってよさそうだ。

【エグゼクティブ・プロデューサーとしての挑戦】

今回の映画化は、『ザ・ビーチ』の原作や『サンシャイン2046』といったダニー・ボイル監督作でも名高い小説家、脚本家アレックス・ガーランドとのやりとりに端を発している。

ふたりはロンドン在住で家が近いということもあり、よく逢って話をする仲なのだそうだ。イシグロは「私を離さないで」を執筆しているさなかにも幾度にも渡ってそのアイディアを話して聴かせた。そんな中、ふとした拍子にガーランドが「映画版の脚本を書かせてくれないか」と言いだしたという。彼の才能を信頼していたイシグロはその可能性に賭けてみたいと考え、原作が出版される前からその約束を取り交わしていたという。「そうやってアレックスが書きあげた第一稿を手に、二人の側から映画会社へ売り込みをかけたんです」。つまり今回のイシグロは原作者のみならず、自ら映画化へ向けて積極的に仕掛けていったわけである。

また、監督の起用についても“情熱”が事を決定づけた。

手掛けたのは創造性に富んだミュージック・ビデオで知られ、長編作品ではロビン・ウィリアムズ主演の『ストーカー』という作品を発表しているマーク・ロマネクだ。彼が映し取る映像ときたら、これまた全てのシーンを記憶にとどめたいほどの美しさを宿している。

イシグロによると、彼もまたこの原作に魅せられ、雇われ監督としてではなく、自らの意志でこの作品を監督する機会を求めてイシグロのもとへ引き寄せられてきたという。その情熱に強く心を動かされ、イシグロはこの作品を彼に委ねようと決めた。曰く、

「彼はアメリカ人ですが、私にとってそのような国籍は全く関係がないことです。むしろ大事なのは、どれだけこの作品に思い入れがあるのか、またどれほどこの映画を作りたい情熱を抱いているのか、といったことです。アレックスと私は彼の強い意志を確認し、自分たちの抱くものと近いモノがあると確信しました」

【キャストについて】

いよいよ製作がはじまると、イシグロはただ「信じる、信頼する」ことに徹した。原作からの脚色や相違点などもすべて任せ、「あとは車の後部座席に乗り込んだような気分で、じっと成り行きを見守った」という。

そうした中、キャストには英国でいま最も注目されている3人の若手俳優が集まった。

『17歳の肖像』でアカデミー賞主演女優賞候補となったキャリー・マリガン、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでもお馴染みのキーラ・ナイトレイ、そして新たに起動する『アメージング・スパイダーマン』の主役に抜擢されたアレックス・ガーランド。まさにこれ以上ない人選である。キャスティングについてイシグロはこういった若手の活躍する英国映画界を「ゴールデンエイジ」と表現し、三人への賞賛を惜しまない。

「彼らは撮影前にそれぞれに自分たちのキャラクターについてじっくりと掘り下げて役作りを進めていました。その読みこみの深さといったら、原作者の私なんか立ち及ばないほどです。キャラクターに関する私の未創造の部分を、むしろ彼らから教えてもらったという感じです」

そしてイシグロは、自らが上梓した原作が、多くの才能の手を経て別次元へと開花していく過程を、「例えるなら、まるでひとつの作曲家の書いた曲があり、それを様々なミュージシャンが演奏することによって、表現の厚みがどんどん広がっていく、まさにそんな体験」と語った。

【映画と小説との関係性】

さて、会見の終盤でイシグロは、多くのベストセラー小説がたどる「映画化」という既定路線について、彼なりの考察を示してくれた。

そもそも小説家としてキャリアを歩む前にはテレビドラマの脚本などにも関わっていたという彼。その経験もあって、小説を執筆するときには常に映画とは別次元の表現の可能性を模索しようと心に決めているのだとか。

「ですから、私の小説を映画化することなど、どだい無理な話なんです(笑)」

イシグロはそう笑いつつも、新作小説を発表する度にエージェントに「映画化の話は来てないかな?」と確認せずにはいられないと言う。その想いの裏側には、彼が幼いころより魅せられてやまない「映画への期待」が込められているようだ。

「小説というものは、映画とまったく違った視点で構築されています。だからこそ、小説をベースにして映画へと再構築しようとする試みはフィルムメーカーにとって大きな勇気と想像力を伴うものと言えるでしょう。そしてそういう労苦を起点にしてこそ、従来のステレオタイプやジャンル物とは全く異なったユニークな題材、新しい語り口を持った映画がどんどん生まれてくると思うのです」

その言葉は、幼いころから日本とイギリスというふたつの国のアイデンティティを抱えてきた彼が自身の中で両者の整合性を保とうとしてきた姿と重なって響いてくる。国境を越えた語り手はいま、文学と映像との境界をも流麗に行き来する存在となった。

彼の作品はこれからどのように進化を遂げていくのか。文学作品、映像作品ともに、今後も世界中からの注目を集めていきそうだ。

そして願わくば、生まれ故郷の日本のことを忘れずに、これからも頻繁に来日、いや“帰国”してもらいたいものだ。

監督:マーク・ロマネク
原作:カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」ハヤカワepi文庫
出演:キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイ、シャーロット・ランプリング
2010年/イギリス、アメリカ映画/シネマスコープ、配給:20世紀フォックス映画

公式サイト http://movies.foxjapan.com/watahana/
3月26日(土)より、TOHO シネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ 他にて全国ロードショー
(C)2010 Twentieth Century Fox

【ライター】牛津厚信

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カテゴリー: ヨーロッパ | 特 集 | 記者会見

2011年4月18日 by p-movie.com

『漫才ギャング』完成報告記者会見 at ルミネtheよしもと

初監督作『ドロップ』が大ヒットを記録し、一気に邦画界の未来を背負う存在に躍り出た品川ヒロシが、再び自身の原作、脚本・監督作を引っ提げて帰ってきた。―それが『漫才ギャング』。

Superfly書き下ろしの主題歌「Beep!!」が疾走感を倍増させる中、今回の品川が描くのは、まさに彼自身が本職とする「漫才」の世界。それも留置所で出逢った見た目も性格もまったく違うふたりが、いつしか意気投合して漫才コンビを結成するという破格を極めるストーリーだ。

果たして今回はどのような作品に仕上がっているのか?すでに初号試写を観た関係者からは「前作越え」の評価も漏れ聞こえてくる本作だが、まだマスコミ披露も行われていない現時点で、出来あがったばかりの達成感や意気込みを語るべく、急遽、完成報告記者会見が行われた。それも、あの笑いの聖地「ルミネtheよしもと」で!

その時、12月22日午前10時。

「ルミネtheよしもと」の客席に集いしマスコミ陣は、幕が閉まった状態から突如、関西お笑いコンビ「ミサイルマン」による前座の猛襲を浴びることとなる。

普段この劇場に通い慣れたお客さんと違い、マスコミ記者は感情表現がかなり奥手だ。ミサイルマンのふたりもこの“アウェイ感”から生じるプレッシャーはハンパじゃなかったはず。それでもふたりは駆け抜けた。『漫才ギャング』に出演もしているおデブな西代洋は、腹にくくりつけたD&G(ドルチェ・アンド・ガッパーナ)のベルトを「3、2、1」の合図で腹の肉の下に忽然と消し去り、拍手喝さいを浴びた。まるで魔法だ。筆者も幾度も目をこすり、これが現実か否かを見極めようとした。現実だった。

いよいよ幕が開く。今度は司会進行としてお笑コンビ「ピース」の綾部祐二が登場。数日後には「M-1グランプリ」の決勝を控えている彼がここでこんなことをしていていいのか?誰もがそう気をそぞろにさせる中、彼は持ち前の安定感で徐々にマスコミを自分のペースへと引き込んでいく。ちなみに彼は本作『漫才ギャング』にも出演を果たしているそうだ。

そしていよいよ本日のメインが始動する。長編第二作目を完成させたばかりの品川ヒロシ監督、そして主演の佐藤隆太&上地雄輔の登場。

会見では『ROOKIES-卒業-』をはじめテレビ&邦画界の起爆剤として爽やかな熱血ぶりを振りまき続ける佐藤隆太が、この『漫才ギャング』のオファーを受けた経緯について振り返った。

「生意気にも非常に運命的なものを感じてます。というのも、たまたま僕自身がテレビで『品川監督の映画第2弾の製作が決まりました!タイトルは『漫才ギャング』です!』という報道を観てたんです。

それで内容も知らないのに、ああ、主人公の年齢はいくつくらいなんだろうな、って漠然とイメージを膨らませて、『ああ、やりたいな!』って思ったんです。でもキャストはとっくに決まっているんだろうな、とも思ってて。

ところが、数日してマネージャーから『映画の話が来てるんだけど』と打ち明けられた。『えっ!もしかして“あの”映画!?』って身体に衝撃が走りました」

そうやって運命的な映画に引き寄せられた佐藤は、初体験となった品川組の撮影現場についてこう語る。

「現場に入ってからの品川監督は本当に想像以上にポジティブで、すごく温かった。なにしろ初めてのタイプの役なので僕自身も多少不安はあったんですが、常に『だいじょうぶ!』って背中を押してくれる。そして『カット!』『OK!』の掛け方が実に気持ちいいんです。この人だったら何処へでもついていきたいなと思える監督でした!」

佐藤の爽やかな発言を受けて、司会の綾部が手際よくテキトーにまとめる。

「なるほど、本当に運命的なものだったんですね~」

間髪いれず、品川がツッコむ。

「(まとめ方が)古いよ!」

「古いってなんなんすか!(綾部)」

「昭和の歌謡祭みたいな・・・(品川)」

(一同爆笑)

今度は上地の出番だ。『漫才ギャング』ではドレッドヘアにタトゥーまで施した奇抜なキャラクターに挑む彼は、すでに品川とも「ヘキサゴン・ファミリー」としても気心知れた仲だ。彼は現場の印象をこう語る。

「監督自身がいい空気を出してくれるので、いつも現場も明るくて新鮮で、出演者とスタッフの距離も近くて、それでも決して慣れ合いにならず、いい意味でビリビリした現場でした…あっ、すみません、ちょっとケイタイが…あ、母さん?」

「出んのかよっ!?(綾部)」

「いま、ちょっと会見中だから…うん、じゃ、また!

…こういうときもある現場で…」

「どういうときだよ!(綾部)」

「こんな緊張感もありつつ(笑)、僕が言うのも何なんですが、品川監督の可能性は無限大だと思うので…また出てあげてもいいかな、と」

(一同爆笑)

まさに舞台上でボケとツッコミが反射光のようにキラキラ飛び交う会見。俄かに品川ヒロシが映画監督ならではの視座でふたりの印象を語る。

「今回はなにしろ漫才師の役ですから、『誰が演じるか?』という部分を占める割合が大きかった。雄輔とは前から親交があって、いつか自分の長編作品に出てほしいっていう想いはあったんですが、隆太くんとは逢ったこともなくて。でも彼の名前が浮かんだ瞬間から、どんどんこの企画のイメージが現実化していくのを感じました」

続けて品川は、佐藤との記念すべき初対面の一幕についてこう触れる。

「食事の席で初めてお逢いしたんですが、まだ映画の台本を渡しただけなのに、いきなり隆太くんが『今から公園に行ってきます!公園でマネージャーとネタ合わせしてきますから!いま、そういう気分なんです!』って言い出したんです。その真面目さというか、役者魂の凄まじさに心から胸打たれると同時に、この人、バカなんじゃないかな?って(笑)」

また上地についてはこのように振り返った。

「今回アクションが大変で本当に最後まで頑張ってくれました。語るべきエピソードは何もないですが…やっぱり彼もバカです(笑)。」

一転してちょっと真剣な顔で、品川がまとめる。

「いやでも、本当にふたりが真面目に役に向かっていく過程には感動させられました。ネタあわせを経て、漫才がみっちり仕上がっていく過程やその最終的な完成度についても、ほんとうに自分たち(品川庄司)の初舞台からは想像もつかないくらいのものだった。ほんとうに最高のキャストだなと想いました!」

最大級の賛辞に、役者ふたりは照れくさそうに頬笑みを浮かべる。凄くいい雰囲気が舞台から滲みでてくる。3人の信頼性やコンビネーションがよく伺えた瞬間だった。


ちなみに、本作のクライマックスでは主演の二人が満員の客席の前でガチの漫才を披露するとか。しかもお客さんにも「笑いたいところで笑ってください」とお願いし、まさに仕込みなしの真剣勝負に仕上がっているというのだ。

果たしてこの結果、どんな映像がスクリーンに刻まれているのか?

アクションからドラマから漫才まであらゆるところに本気印が宿った『漫才ギャング』の真価を心から期待したい。

『漫才ギャング』
配給:角川映画
(C)2011「漫才ギャング」製作委員会

公式サイト  http://www.manzaigang.jp/
2011年3月19日(土)全国ロードショー!

【ライター】牛津厚信

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カテゴリー: 特 集 | 記者会見

2010年12月24日 by p-movie.com

東京フィルメックス閉会式(2010.12.06)

第11回東京フィルメックスはその最高賞に『ふゆの獣』を選出して9日間に渡る熱い日々に幕を閉じた。そのクロージング・セレモニーの模様をレポートする。

■猫たちに捧ぐ

受賞結果の発表はまず観客賞から。

選ばれたのは『選挙』や『精神』といったドキュメンタリーで名高い想田和弘監督の『Peace』(日本・米)だった。

日本の福祉風景にカメラを向けながらも、その内容からは次第に戦争と平和、人間の生と死といったテーマが浮かび上がってくる。

受賞スピーチにて監督は「作品が作品ですから、自分には観客賞など一生縁がないモノと思っていました。これは恐らく、映画に出演してくれた猫たちのおかげでしょう。猫たちはアナゴが大好物なので、今度、感謝の意味を込めてお土産にもっていきたいと思います」と語り、会場を和ませた。

■通訳者の涙

続いて審査員特別賞の発表。

受賞したのはハオ・ジェ監督の『独身男』(中国)だった。

北京から150キロ離れた村を舞台に、独身の中年男が若い妻をめとったことから巻き起こる波乱をドキュメンタリー・タッチで描いた作品だ。

審査員は本作について「演技経験の無い村人たちとのコラボレーションから育った高い有機性と、中国農村部に存在する人間の性欲と社会問題を中立的な視点で描いている」と高く評価した。

壇上に上がり、賞状、トロフィーを受け取ったハオ・ジェ監督は終始うやうやしく、腰の位置まで頭を垂れて謝意を示し、受賞スピーチでは開口一番「はあー…」と深い溜息。すぐには言葉の出てこない心境を全身で表現していた。

「これは私の初めての作品なので未熟な点も多々あります。でも少しだけいいところがあるとすれば、それは我々と共に良い関係、良い空気を作ってくれた村人たちのお陰でしょう。彼らに心から感謝したい」

優しく穏やかに響き渡るハオ・ジェ監督の声は、さらに「個人的なことですが…」と付け加えた。

「実はこの脚本を手掛けているのは私と母と父の3人なのですが、父は製作途中の2008年に他界しました。しかし私は製作中も、いまこの瞬間にも、父がどこか別の世界から私を見守ってくれているのを感じています」

これまで緊張のあまり目線が泳ぎがちだったハオ・ジェ監督が、次の瞬間、落ち着いた表情で、会場を仰ぎ見て、こう続けた。

「お父さん、あなたの息子は大丈夫です。これからも一緒にがんばっていきましょう」

通訳さんが喋れなくなった。ジェスチャーで「ごめんなさい」と断わって涙をぬぐい、掠れた声で言葉を訳した。

この方を媒介に、観客側にもとめどない想いが溢れてきた。

映画とはまた違うドラマが、そこに生まれていた。

■自主製作の底力

映画祭の締めくくりとして最優秀作品賞が発表された。

冒頭にも紹介したとおり『ふゆの獣』。1つの職場で巻き起こる4人の男女の激しいぶつかり合いを描いた作品だ。

審査員団からは「映画的手法を用いて心理ドラマを類稀なる強烈なレベルへと発展させている。特にカメラの使い方が際立っており、俳優たちの演技も同様に素晴らしい」との賛辞が贈られた。

登壇した内田監督は「このような事態を誰が想像したでしょうか」と反語表現で切り出し、「期間中、他の監督の作品を観るだけでも毎日が喜びであり、感動であり、勉強だった。その上こんな賞をいただけるなんて。何も想定していなかったので、今日の私は映画祭のスタッフTシャツという身なりです」と客席の笑いを誘った。

先の審査員の選考理由には最後にこうも付けくわえられていた。「この作品が非常に限られた予算の中で大きな表現力を極めていることも高く評価します」。

内田監督はその予算を「110万円です」と何の躊躇もなく暴露する。そして「日本の自主製作は本当にレベルが高いと思います。これを機にどんどんみんなが前に出てきてくれれば」とインディーズ界にエールを送った。

そして監督の呼び掛けに合わせて、客席に並んで座っていた本作の若きキャストたちが立ち上がり、壇上へと駆け上がった。その姿には見ているだけで涙が込み上げそうな青々とした新鮮さがあり、会場にはまるで親戚の子が受賞したかのような親しみがじんわりと拡がっていった。

彼らもまたとても謙虚で、客席や審査員にむかって何度も何度も頭を下げていた。キャストを代表して加藤めぐみさんが挨拶に進み出る。

「映画祭で上映していただけるだけで、皆さんにご覧いただけるだけで嬉しかったのに、こんな賞までいただけて本当にありがとうございます」

それから、ちょっと向き直って「監督にも心からお礼を言いたいです」。

「今回の映画はほとんどのシーンがアドリブで撮影されました。私たち4人の演技を信じてカメラを回してくれて、本当にありがとう!」

すべての式次第が執り行われたあと、林加奈子ディレクターによる言葉で閉会式は幕を閉じた。

「観る人がいて、初めて映画は輝きます。観る人と作る人がいて、初めて映画祭が続けられます。刺激的な素晴らしい作品がある限り、フィルメックスはつづきます。みなさん、また来年お逢い致しましょう!」

公式サイトアドレス http://filmex.net/2010/

【ライター】牛津厚信

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2010年12月6日 by p-movie.com

愛が訪れる時(東京フィルメックス 2010.12.06)

東京フィルメックスのコンペティション部門にて『愛が訪れる時』が上映された。『最愛の夏』『お父さん、元気?』などで知られる台湾の名匠チャン・ツォーチ監督による本作は、台湾版アカデミー賞にあたる「金馬奨」最優秀作品賞を受賞したばかり。会場には大勢の観客が駆けつけ祝福ムードに包まれていた。

映画の舞台は台北。カメラはとある大家族の経営する飲食店をたゆたうように映し出す。それぞれの面々を捉えたあと、観客の目線は出産間近の母親の巨大なお腹へ。一歩、二歩、進むごとに表情は険しさを増す。きた!陣痛が始まる!店内はもう大騒動。やがて響く産声。本作は、かくも新しい生命の誕生と共に、めでたく幕を開けていく―。

だが、祝福される生命もあれば、一方には自分が望まれずに生まれてきたと感じる者もいる。年頃の少女ライチュンもその一人。彼女はことあるごとに家族と衝突し、やや暴走気味に若さをむさぼる。そして、いつしか予期せぬ妊娠に見舞われることに―。

責任の伴わない行為に家族からは怒号が飛ぶ。が、それでも彼女は産む、と宣言する。いつしか家族も根負けする。子育てに忙しい母、飲んだくれてばかりの父、ガミガミと叱り飛ばす叔母さん、自閉症を患って絵ばかり描いている伯父さん、いつも穏やかなお祖父ちゃん・・・そして日に日に大きくなっていくお腹。胎内で潮の満ちていく周期と同調するかのように、家族の過去や複雑な関係性が少しずつ紐解かれ、観客へと提示されていく。

ここからが本作の本領発揮だ。まさに心に打ち寄せる珠玉のエピソードの波状攻撃。中盤以降、この勢いが止まらない。鳴りやまない音楽の連なりに合わせ、観客は徐々に静かな感動の渦へと身を預けていくことになる。

ときにチカラ技と受け取れる場面もあるだろう。だがその後にはフッと肩の力の抜けた場面がフォローに入る。嗚咽の後には優しい抱擁が待っている。誰かが孤独ならば他の誰かが支えてくれる。それが家族。ほんとうに面倒くさくて、しかしその誰もが大切な存在。オーソドックスだが誰もが共感せずにいられないテーマをここまで丁寧に織り込んでいけたのもチャン・ツォーチ監督の卓越した演出力の成せる業と言えそうだ。

上映後にはチャン・ツォーチ監督をはじめ、主役ライチュン役のリー・イージェ、妹役のリー・ピンイン、伯父アジェ役のガオ・モンジェが登壇。それぞれの役づくりにまつわる裏話を披露した。撮影中、17歳だったというイージェはこう語る。

「私が演じたラオチュンは、ベッドシーンや家族との大喧嘩、パパイヤの木に八つ当たりして叩き折ったり、出産シーンもあった。すべてが未知の体験で本当に大変でしたが、みんなの支えがあって何とか乗り越えられました」

また役作りにおいてモンジェに与えられた課題ついては、ツォーチ監督自らがこう打ち明けた。

「彼の演じるアジェは何時間でも部屋に閉じこもって絵を描き続けるという人物です。彼になりきってもらうためにモンジェには一カ月ほどずっと部屋に閉じこもって、あまり人としゃべらず、ただひたすら絵を描き続けてもらった。劇中に登場する絵?ああ、あれはすべて本当に彼が自分で描いたものなんですよ」

その絵画はまるで人間の純粋さの結晶のごとく観客の心に深い味わいを残す。映画の感動冷めやらぬ客席からはモンジェの役づくりに対して温かい拍手が送られ、彼もまたそれに穏やかな笑顔で応えていた。


『愛が訪れる時』 When Love Comes / 當愛來的時候
台湾 / 2010 / 108分
監督:チャン・ツォーチ (CHANG Tso chi)

公式サイトアドレス http://filmex.net/2010/

【ライター】牛津厚信

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カテゴリー: お知らせ | 東京フィルメックス特集 | 特 集

2010年12月6日 by p-movie.com