「ねこにみかん」 大東駿介さんインタビュー

俳優・大東駿介、「平坦な生き方は嫌い。波のある人生を生きたい!」

不思議な絆で結ばれたある一つの家族を中心に、「家族とは?」「親子とは?」「愛とは?」など、普遍のテーマを真摯に見つめた映画「ねこにみかん」に出演している大東駿介さんが作品について語った。

本作は、ある自然豊かな山間の村を舞台に、不思議な絆で結ばれたひとつの家族を描いたヒューマンドラマ。智弘(大東駿介)は恋人の真知子(黒川芽以)を連れて、和歌山県有田川町にある実家に帰省してきた。その場所で真知子が目にしたのはいびつな関係にある不思議な家族だった……。

大東さんが俳優をめざして上京したのは高校卒業後。「学生の頃、自分のことがあまり好きじゃなかった。やりたいことの出来ない人生ってイヤだと思っていた。役者になりたいと思っていたけれど、周りからは絶対に出来ないと言われていた。悔しかったから『ぜったいになってやる!』って思って上京しました」と一気に語った。上京を決意したときに先生が「行って来ればいい!」と背中を押してくれたことに勇気づけられたことも明かした。

初共演となった恋人役の黒川さんについて、印象を聞くと「真知子(黒川)は、いびつな家族を目の当たりにして、自分の口からはっきりと『おかしい』と言える強さを持った女性。そんな真知子自身も明るさとか笑顔とか、優しさの裏に家族への悲しい思いを抱えている……。演じる黒川さんも力強い人で、表現する力が素晴らしかった。ナチュラルに現場にもいるし、周りへ気配りもあって真知子そのもので、一緒に演じてやりやすかった」と述懐した。

今作が長編映画デビューとなった戸田監督についても「フットワークの軽い方。地域密着の作品なので地元の人がたくさん協力してくださって監督の力になっていました。監督って巻き込む力のある方なんです」と語った。

本作品は和歌山県の地元有志が制作資金集めから参加し、地域の全面協力のもと和歌山県オールロケを敢行。舞台は「有田みかん」で有名な和歌山県有田川町、そして有田市。温泉、みかん、山、川、郷土料理など豊かなロケーションのなかで撮影された地元発の作品となっている。

オールロケで、2週間に及んだ合宿について大東さんは「撮影に入る前に3~4時間家族について語り合う時間を持ちました。すごく新鮮で良かったです。みんなでずっと一緒にいて、ほんとに家族なんじゃないかなって錯覚するときがあった。みんなで買い物に行ったりして楽しかった」と笑顔で振り返った。

映画、舞台、ドラマと活躍の場を広げている大東さんだが、今後の俳優としての自分をどのように考えているのだろうか?
「まだ今後のことはぜんぜん分からない。やっていて楽しいことと自分に合う、合わないってことはけっこう違っていて、今は好き嫌いを考えないでとにかくやってみる。受けた仕事が辛くて大変だったりすると、それが逆に楽しかったりするんです。平坦な生き方は嫌い。波のある人生を生きたい。人生は事件が起きたほうが面白いって思っています」。仕事に入ると没頭してしまうと話す大東さんだが、ひとり旅に憧れているという。「まずは日本を端から端まで車に乗って行ってみたい。いつか海外ひとり旅にもプライベートで行ってみたい」と思いを馳せた。

さらに、27歳の大東さんに好きな女性のタイプを聞いてみると、「突拍子もない人が好き。自分の想像の範疇(はんちゅう)を超えているのがいい(笑)。健康で、もりもりごはんを食べてくれる人がいいな」と楽しそうに語ってくれた。

最後に「いびつな家族を描いていますが、観終わった後にあったかい気持ちになれる作品。帰る場所があるって素敵だと思ってもらえれば……。肩肘張らずに観てほしいですね」とメッセージした。

(取材・文 福住佐知子)

<イントロダクション>

今作は、自然豊かな山間の村を舞台に、不思議な絆で結ばれたある一つの家族を通して「家族とは?」「親子とは?」「愛とは?」など、普遍のテーマを真摯に見つめた心温まるヒューマンドラマ。

家族の存在が希薄になっている昨今、関係がいびつな家族を通して機能できない関係性の中でも、それぞれが存在理由を認め合っていれば共存できるという事をゆったりとした時間の中で描き、他人を認める豊かさと、家族の素晴らしさを感じさせられる作品にしあがっている。

<ストーリー>

智弘(大東駿介)は恋人の真知子(黒川芽以)を連れて、和歌山県有田川町にある実家に帰省してきた。その場所で真知子が目にしたのはいびつな関係にある不思議な家族だった。
家族構成は、智弘のほかに、腹違いで同級生の三兄弟。不登校の弟・隆志(清水尚弥)。家族に興味を示さない姉・由美(東亜優)。自分に劣等感を抱える恋愛恐怖症の妹・さやか(中村有沙)。三人の母親である家事全般を担当するママ・里美(竹下かおり)、スナックの経営者であるカカ・佳代子(高見こころ)、高校教師のハハ・成美(辰寿広美)、そして全員の父親であるチチ・正一郎(隆大介)の七人。
それぞれを認め合うというルールの中、絶妙なバランスを保っているように見える家族だが、真知子の目には「逃げている」ように見えた。
人と人が一緒に暮らすというのはどういうことなのか、他人である真知子の出現により、それまで保たれていた「いびつな家族」のバランスが徐々に失われていくのだった……。


カテゴリー: 特 集

2014年2月21日 by p-movie.com