千と千尋の神隠し

宮崎版「不思議の国のアリス」 ★★★★★
[01/日] 2h05 7月20日より日比谷スカラ座にて全国東宝洋画系にてロードショー

製作総指揮:徳間康快
監督:宮崎 駿
原作・脚本:宮崎 駿
声出演:柊 瑠美 入野自由 夏木マリ 菅原文太 内藤剛志 沢口靖子
音楽:久石 譲
配給:東宝
宣伝:メイジャー

[ファンタジー的寓話:Spirited Away]

「もののけ姫」で引退を決意した宮崎 駿が、とある理由から新たな出発点として撮り上げたエンターテイメント作品。声の出演は主人公・千尋に「すずらん」で主役を務めた柊 瑠美、千尋を助けるハクに「ウルトラマンガイア・時空の大決戦」の入野自由、ほか上記メンバーのほか上条恒彦、小野武彦・我修院達也。音楽はお馴染の久石 譲。

ごく普通の家庭で生まれ大切に育てられた一人っ子の荻野千尋は、引越し先の新しい家に向かう途中。父親の運転する車は、道を一つ間違えて林道へ入り、不思議な建物の前に着いた。興味範囲で千尋の父親と母親はトンネルへ入ってしまい、千尋も仕方なく着いていく。アミューズメントパークの変わり果てた姿と思った千尋の父親だったが、美味しい匂いに誘われ中へ入っていき店に並べられていた食べ物を母親と食べ始めてしまう。実はここは人間の目には決して見えない世界で、古くから棲む神様(霊々)が病気と傷を癒しに通う温泉町だった。この町の食べ物を食べた千尋の親は豚に変えられてしまう。千尋は湯屋の帳場を預かるハクという少年に助けられるが、この町で生き延びるために湯屋を支配する湯婆婆という強欲な魔女の元で働くことを言い渡される。

宮崎ワールド集大成と言うべき作品。ストーリーは分かり易いし、登場するキャラクターもユニークで、しかも今までの宮崎 駿監督作品が随所に盛り込まれていていて、全く飽きさせない。もう少し千尋が普通の軟弱な少女だというエピソードと、舞台となった温泉町の紹介をしてくれるともっと面白かったかもしれない。いつもながら久石 譲さんの音楽は素晴らしい。今年の夏休み映画は、まだ全部見てないけどこの作品がトップを制する可能性は大きい。「ラマになった王様」のレビューで、夏のファミリー・アニメ映画は「ポケモン」と「ラマ」は見逃せないと書いてあるけど、「千と千尋の神隠し」もお忘れなく。

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カテゴリー: 日本 | 映画レビュー

2001年7月21日 by p-movie.com

ラマになった王様

意地悪ばっかりしていると、ラマにされちゃうよ。 ★★★★☆
[00/米] 1h18 7月14日より渋谷東急3ほか全国東急洋画系にて夏休みロードショー

監督:マーク・ディンダル
製作:ランディ・フルマー
脚本:デビッド・レイノルズ
出演:藤原竜也 主題歌:西城秀樹
配給:ブエナ ビスタ インターナショネル ジャパン
宣伝:ムービーテレビジョン

「ライオン・キング」のスタッフが描く、わがままな王様と心優しい農夫の大冒険を描いた友情のファンタジー。脚本はディズニー作品『ムーラン』『バグズ・ライフ』『ターザン』『トイ・ストーリー2』に、正月公開の新作『アトランティス』も手掛けているデビッド・レイノルズ。監督は『リトル・マーメイド』の視覚効果スーパーバイザーや『アラジン』の効果アニメーターに、実写作品『ロケッティア』のアニメ部分の監督をしたマーク・ディンダル。

南米の険しいジャングルの彼方にある王国にクスコという若くてカッコよく大金持ちの王様がいる。だが彼はわがままで意地悪な奴だった。今日も山の上に自分の別荘を建てる為に農夫パチャの家を壊そうとしていた。だがリストラされた魔女の恨みをかって、魔法の薬を飲んだクスコ王はラマにされ城から放り出された。偶然にもジャングルで農夫パジャと遭遇したラマの王様は、城に戻り人間に戻る為に助けを求めた。

スピーディーな展開でギャグ満載だし大人でも笑える作品。上映時間は78分と短くコンパクトであっという間、もう少し見ていたい気分にさせてくれる。2回見ても「パール・ハーバー」に追いつかないもの。それに「苦労して人は成長する」とか「意地悪やワガママは愚かな事」とか「どんな時にも助け合う友達は必要」などメッセージがあり、夏のファミリー・アニメ映画で「ポケモン」と、この作品は見逃せない。

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カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2001年7月16日 by p-movie.com

こころの湯(SHOWER:洗澡)

中国銭湯人情映画 ★★★★☆
[99/中国] 1h32 7月7日よりシャンテシネにてロードショー

製作:ピーター・ローアー
監督:チャン・ヤン
出演:チュウ・シュイ プー・ツンシン ジャン・ウー
配給:東京テアトル/ポニーキャニオン
宣伝:メディアボックス

「スパイシー・ラブ・スープ」でデビューしたチャン・ヤン監督の2作目は日本でも馴染み深い銭湯を舞台にしたヒューマンドラマ。出演はNHKドラマ「大地の子」日本人孤児の養父役で知られるチュウ・シュイ、「青い凧」「スパイシー・ラブ・スープ」のプー・ツンシン、独占インタビューをさせてもらったジャン・ウー。

北京の下町で銭湯「清水池」を営むリュウと知的障害のある息子アミン。今日も銭湯は常連客で賑わっている。ある日、ビジネスマンの長男ターミンが突然帰郷した。アミンから届いた葉書に父が横たわる絵を見て戻ってきたのだった。元気な父の姿を見たターミンは2、3日ゆっくりすることに。だがこの間に、アミンが行方不明・台風による天窓補強・常連客のトラブルと大忙し。そしてターミンは心から楽しそうなお客さん達の顔を見て初めて父の仕事を知った。だが地域の再開発が決まり、この銭湯が取り壊されてしまう事が決定してしまう。ターミンは帰るのを先延ばしにするのだが・・・・。

大ヒットロングラン中の「山の郵便配達」同様に親子の絆を描いたタイトル通り心温まるストーリー。オープニングの近代的なシャワー室から、年に一度しか雨が降らない地方の村と、人間とは切っても切れない風呂事情満載。特に舞台となった70年代の風呂屋は、理髪室から真空壺マッサージまで完備されていて、日本とは全く違う。親子3人の演技は素晴らしいし、サブキャラの常連客もいい味を出している。日本でも山田洋次監督でリメイクしたら活けそうだけど。製作がアメリカのプロデューサーで、まず海外の映画祭で話題になって、中国でもヒットしたと言うのも面白い。弟役ジャン・ウーの独占インタビューも、ぜひ読んでください。

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カテゴリー: アジア | 映画レビュー

2001年7月9日 by p-movie.com

A.I.

真実の愛を問うロボットの苦悩 ★★☆☆☆
[01/米] 2h25 6月30日より丸の内ルーブルにてロードショー

監督:スティーブン・スピルバーグ
脚本:スティーブン・スピルバーグ
出演:ハーレイ・ジョエル・オスメント ジュード・ロウ ウイリアム・ハート フランシス・オーコナー
配給:ワーナー・ブラザース
宣伝:レオ・エンタープライズ

スタンリー・キューブリックの遺志を受け継いでスピルバーグが全精力を傾けた衝撃作品。キューブリックがこの作品の映画化を考えていたのが、「シャイニング」を製作する前だった。だがあの「2001年宇宙の旅」を製作したキューブリックが当時の映像技術では映画不可能と判断して実に20年もの間温めていたのである。だがキューブリックは何故かこの作品を脚本にしていなかった。残っていたのは90ページの企画書だけ。スピルバーグはこの企画書を元に「ポルター・ガイスト」以来19年ぶりに脚本を書いている。出演はオスメントとジュード・ロウのほかにウイリアム・ハート、「悪いことしましョ!」のフランシス・オーコナー、「プレタポルテ」のサム・ロバース。

地球温暖化によって都市が水没している近未来。住宅地制限と共に子供を持つ権威も制限されていた。スウィントン家は息子が重病で冷凍催眠されていた。そこで寂しさを紛らわすためにウイリアム・ハート扮する博士が作った最新ロボットのデイビットを迎えた。最初は拒絶反応を見せる夫人だったが、返却すると処分されると聞き、次第に息子として接していく。だが医療の進歩で息子が甦った。デイビッドは進化するロボットでライバル視や嫉妬を覚えてしまう。自分も愛されたいと思うデイビットだったが、婦人は次第につらくなり返却する事が出来なく捨てられしまう。そしてデイビッドはジュード・ロウ扮するジゴロ・ロボットと出会う。

娯楽大作かと思いきや結構真面目に作られた作品で子供には不向き。映画は完全なスピルバーグ印の作品だが、キューブリックぽい箇所も残っていた。それが、どうもスピルバーグがやりたかった事とキューブリックがやりたかったんじゃないかと思う事がかみ合ってないような気がした。でもキューブリックが製作していたらもっと困難だっただろう。というわけでこの作品は今からあげる事に当てはまる人だけにお勧めします。

・ハーレイ・ジョエル・オスメントのファンの方
・ハーレイ・ジョエル・オスメントと同じくらいの子供をお持ちの方
・すごくピュアな心を持っている方

これに当てはまらない方は、まず感情移入が出来ないでしょう。そしてはっきり言ってこの作品を秘密主義にしたのはマイナスだと思う。同じ人間になりたいロボットを描いた作品なら、この作品でナレーションを務めたロビン・ウイリアムスの「アンドリューNDR114」の方が自分は好きだ。だた、デイビッドの相棒として登場する喋って歩くテディは人気が出るかもしれない。でもこれも、小中和哉監督の「くまちゃん」で登場してるけど。

☆2 つにしたのは「パール・ハーバー」と比較したかったから。

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カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2001年7月2日 by p-movie.com

RUSH!

逃げ切れるか?それとも破滅か? ★★★★☆
[01/日] 1h50 6月23日よりシネ・アミューズにてロードショー

企画:あいかわ翔 神野智
監督:瀬々敬久
脚本:瀬々敬久 井土紀州
出演:哀川翔 キム・ユンジン 柳葉敏郎 大杉漣 阿部寛 峰岸徹 麻生久美子 千原浩史 ハニホー・ヘニハー
配給:スローラーナー
宣伝:スローラーナー

香港映画に日本の俳優が、日本映画に香港の俳優が出演するのが普通になってきたが、今回は韓国から「シュリ」の女スパイ役が強烈だったキム・ユンジンが日本映画に登場。哀川翔の相手を務めている。このエキセントリックなスラップスティック・コメディは、結末があ一だったらナー、こ一だったらナーと嘆く映画通に送る挑戦状作品です。出演者のメンバーを見ても何かやってくれそうでしょ。ハニホー・ヘニハーは、アスパラドリンクのCMの変な外人です。ほかに青田典子や竹内力が友情出演しているのも見逃せない。監督は「HYSTERIC」の瀬々敬久。

TVでCM まで流す韓国人が経営する焼肉屋チェーン店で働く哀川翔演じる昌也が、オーナーの娘偽装誘拐を手伝う。だが、オーナーは裏でヤバイ家業をしていて、雇っていた人物に逆に殺されてしまう。そしてこの殺しを昌也達になすりつけた。この雇われ人の表の顔は刑事(演じるは、大杉漣と阿部寛 )だったのだ。間抜けな誘拐犯と悪どい刑事の逃走劇はスタートした。一方、このストーリーに突如登場するのが妻に別荘で浮気されているのを追いかけてくる柳葉敏郎演じるサラリーマン風の島崎。彼は浮気相手のホストとヒッチハイクしている謎のプロレスラーと3人で珍道中を展開。これが上手い具合に合わさって来る。時間軸を巧にずらした構成はエアポケットに入り込んでしまったようで、てっきり自分は映写技師が巻数を間違えてしまったかと思ったくらい。ぜひ皆さん、この挑戦状受けてみてください。キム・ユンジンが哀川翔と逃走している時に「何故、日本は国境がないの!」のセリフには大笑いしてしまいました。

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カテゴリー: 日本 | 映画レビュー

2001年6月25日 by p-movie.com