イントゥ・ザ・ウッズ


(C) 2015 Disney Enterprises, INC. All Rights Reserved

「子を授かりたければ、4つのアイテムを森から持ち帰るのだ」
魔女にかけられた呪いのせいで子供に恵まれなかったパン屋の夫婦は、呪いを解くために4つのアイテム“血のように赤いずきん”“ミルクのように白い牝牛”“黄金に光り輝く舞踏会の靴”“トウモロコシのように黄色い髪”が必要だと告げられ、彼らは子供を授かるという願い(wish)を叶えたい一心で森へと向かった。

時を同じくして、同じ王国に住む赤ずきん(グリム童話)は森に住むおばあさんのお見舞いへ。貧乏暮らしをしているジャック(イギリスの童話)は隣町に大事な牛を売りに出かけていく。意地悪な継母とその娘たちにいじめられていたシンデレラ(ペロー童話集)はお城の舞踏会で王子に見初められることを祈る。実はパン屋の主人の妹でありながら、魔女に連れ去られ森の中の塔に閉じ込められて外の世界を知らずに暮らすラプンツェル(グリム童話)は、いつか自由の身になれることを願いながら暮らしていた…。


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赤ずきんはオオカミに騙されて食べられてしまうが、通りがかったパン屋の主人に助けられ、「誰もが善人ではない」と学んで少し大人になる。ジャックは牛と交換にパン屋から手に入れた魔法の豆から生えた巨大な豆の木のおかげで、巨人の国から大金を得ることに成功する。シンデレラは舞踏会で王子の心を射止めて結婚する。ラプンツェルはもう一人の王子(シンデレラの王子の弟)と外の世界で結ばれる。パン屋夫婦を通してそれぞれが森の中で出会い、全員の願い(wish)が叶った。全てがハッピーエンドで終わるかと思ったその時、王国に衝撃の事件が訪れ、事態が一変する。願いを叶えたはずのおとぎ話の主人公たちを待ち受けていた、驚くべき運命とは?

『イントゥ・ザ・ウッズ』はブロードウェイの生ける伝説、『ウエスト・サイド物語』のスティーヴン・ソンドハイムのロングラン・ミュージカルをディズニーがついに映画化。彼が自ら手掛けたオリジナル舞台の楽曲に加え、ディズニーで描かれる映画のために新曲も提供し“おとぎ話の主人公たち”が、それぞれの願い(wish)を叶えるため迷い込む“魔法の森”を魅力的に描き出すミュージカルとして完成した。

本作の魔女役にはオスカー常連のメリル・ストリープ(初めての魔女役)。赤ずきんのオオカミ役にジョニー・デップ(究極のコスプレイヤーぶりは健在)というハリウッドのトップスターが名を連ね、さらに、シンデレラ役にはアナ・ケンドリック、その王子役にクリス・パイン、さらにパン屋の妻役にエミリー・ブラントが抜擢されるなど、名実ともに超豪華キャストが集結し、作品を完璧なものに仕上げた。


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おとぎ話の主人公たちが同じ王国内に住んでいたというユニークな設定がこれから始まる物語の楽しさを感じさせ、「~めでたし、めでたし」のハッピーエンド…で終わらず、新たな物語が突然始まるところが更に笑える。『赤ずきん』、『ミッキーのジャックと豆の木』、『シンデレラ』、『ラプンツェル』、ディズニーには元になったアニメ作品が存在するが、できれば、本作の前に復習しておくことをお勧めしたい。「実写化されても、やはりディズニーだね」と再度感動できるはずだ。また、アニメ版とは少々違ったキャラクター設定にも気づくかもしれない。今回、私が4人の主人公の中で注目したいのが、シンデレラ。今までは、継母とその娘たちにいじめられても、耐える、心優しいまっすぐな女性という受け身なイメージのヒロインであったが、今回は現代的で欠点もある存在として描かれている。例えば、王子の愛を確かめられるように意図的に靴を落としているのだ。おとぎ話にも時としてリアルな設定が必要ということか? ディズニー次回作、実写版の「シンデレラ」ではどのように描かれているのかは実に楽しみなところである。

本作『イントゥ・ザ・ウッズ』はおとぎ話の“その先”を描いた大人のためのミュージカルである。王国内の“魔法の森”を舞台の中心にしたグランドホテル方式の作品だが、華やかでエンターテイメント性にあふれた作品である一方で、実はその奥に「人生は“願いがかなってめでたし、めでたし”だけでは終わらない。願いがかなった後も続いていく長い人生において、本当の“幸せ”とは何か?」というメッセージを持っている。

しかし、「“幸せ”とは何か?」という問いかけの答えは一つだけではない。だからこそ『イントゥ・ザ・ウッズ』はおとぎ話を卒業し、人生の深みを知った“大人のための”ミュージカルなのである。ディズニーは『アナと雪の女王』『マレフィセント』で「王子と結ばれてめでたし、めでたし」という王道のハッピーエンドを覆し、「現代の“愛”」とは何かと問いかけた。そして『イントゥ・ザ・ウッズ』では「現代の“幸せ”」とは何かを我々に問いかける。

<CREDIT>

■出演者
メリル・ストリープ、エミリー・ブラント、ジェームズ・コーデン、 アナ・ケンドリック
クリス・パイン、ジョニー・デップ、リラ・クロフォード
■監督:ロブ・マーシャル
■配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
■2014年/アメリカ/125分
■原題:『Into the Woods』

2015年3月14日(土)全国ロードショー
公式ホームページ http://www.disney.co.jp/movie/woods.html

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【ライター】戸岐和宏

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カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2015年2月27日 by p-movie.com

はじまりのうた


(C) 2013 KILLIFISH PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED

ジョン・カーニー監督と言ってピンとこない方も、『Once ダブリンの街角で』はご存じの方が多いのではないだろうか。低予算作品として2006年に製作された『Once』は、その完成度の高さもさることながら、主題歌の「Falling Slowly」がアカデミー賞で歌曲賞を受賞したこともきっかけとなり、全世界で異例のヒットを記録した。そんな彼の最新作が『はじまりのうた』。ニューヨークを舞台に、孤独を抱える男女がアルバムのレコーディングのために奔走する音楽ドラマだ。


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グレタ(キーラ・ナイトレイ)は売れないシンガーソングライター。長年の恋人、デイブ(アダム・レヴィーン)の楽曲上のパートナーとしてイギリスから渡米してきたが、メジャーレーベルと契約が決まるやいなや、彼の浮気が発覚、破局。深く傷つき故郷への帰国を考えていた。一方、かつて一世を風靡した音楽プロデューサー、ダン(マーク・ラファロ)は仕事をクビになり別居中の家庭もうまくいかない。自殺を考えたある日、偶然彼はバーでグレタの歌を耳にする。楽曲のヒットを確信した彼はグレタに、ニューヨークじゅうのさまざまな名所でゲリラレコーディングをする、前代未聞のアルバムを製作しようと持ちかけるが…。

主演は『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでおなじみのキーラ・ナイトレイと『アベンジャーズ』シリーズでその名をメジャーにしたマーク・ラファロ。堅物なイギリス人シンガーソングライターと、やさぐれた生活を送る音楽プロデューサーを好演している。正反対の二人がああでもないこうでもないと言い合いながらアルバム製作に奔走する姿には、思わず笑みがこぼれてくること必至。恋人や家族とうまく距離感をつかめず、次の一歩を踏み出しかねている彼らの姿には、思わずいつかの自分の姿を重ね合わせてしまうだろう。
本作はそんな、いわゆる“負け組”の再起を描いた作品だ。

愛すべき“負け組”たちは映画のなかで“日常に潜む小さなしあわせ”に改めて気づかせてくれる。中盤のグレタとのデートの際に、道行く人を眺めながらダンはこんな言葉を口にする。「これが音楽の魔法だ。陳腐でつまらない景色が、美しく輝く真珠になる」。本当にその通りだと思う。私たちも、日常のふとした瞬間にいつもの景色がまるで一枚の写真のように、とても美しいものを見ているように感じることがある。わざわざピックアップするほどのことではないのかもしれないが、確かに普段は見落としがちな、ささやかだけど幸せな瞬間だ。この素朴で温かい視点が、本作もといカーニー監督自身の魅力なのだと思う。
ちなみにこのシーンで、グレタとダンはお互いのプレイリストからお気に入りの曲を教え合いながら、夜の街を歩き回る。ブロードウェイのネオンのなかを歩きながら、フランク・シナトラやスティービー・ワンダーの楽曲が彩るこの印象的なデートシーンは、近年まれにみる楽しさで個人的には『(500)日のサマー』のIKEAデートを凌ぐ勢いだった。文化系カップルの新たな憧れのデートプランになるのでは?と予想している。


(C) 2013 KILLIFISH PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED

そしてもちろん、本作の影の主役はなんといってもニューヨークという街。地下鉄やエンパイアステート・ビル、セントラルパークなど、演奏隊はさまざまな場所でレコーディングをするが、ほんの数ブロック離れただけで雰囲気や人がガラリと変わる様子に改めて驚かされる。住人の生活音や道を行き交う車の音、子供たちの遊び声、そういった音をすべてひっくるめて録音された楽曲たちは、まるでニューヨークという街のエネルギーをそのままパッキングしているかのようで、聴いているだけでわくわくしてしまうこと請け合いだ。

ちなみに『Once』と同じく、今回も主題歌の「Lost Stars」はアカデミー賞の主題歌賞にノミネートされている。授賞式当日はアダム・レヴィーンによるパフォーマンスも決定しているので、ぜひ2度目の受賞を期待したい。

<CREDIT>

■出演者:キーラ・ナイトレイ、マーク・ラファロ 他
■監督/脚本:ジョン・カーニー
■配給:ポニーキャニオン
■2013年/104分

2014年2月7日(土)全国ロードショー
公式ホームページ http://hajimarinouta.com/

(C) 2013 KILLIFISH PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED

【ライター】石井絵理香

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カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2015年2月9日 by p-movie.com

真夜中の五分前


(C)2014 “Five Minutes to Tomorrow” Film Partners

上海を舞台に、双子の姉に恋をした青年がたどる運命を描く、三浦春馬主演のミステリアスなラブストーリー。

行定勲監督が初の海外オールロケを敢行。異国情緒あふれる上海の街並みが作品を盛り上げる。
ヒロインに扮するのは中国の若手トップスターとして人気のリウ・シーシーが双子を一人二役で、妹の婚約者を台湾のチャン・シャオチュアンが演じる。
時計修理工のリョウはルーメイという女性と知り合う。ルーメイには女優をしている一卵性双生児の妹ルオランがいて、彼女の婚約祝いに贈るプレゼントを一緒に選んでほしいという。
リョウはルーメイと親しくなるにつれ、彼女が抱える心の闇に気づく。それは、同じものを好きになってしまう双子の性で、ルーメイもルオランの婚約者が好きだったのだ。
しかし、双子だけで行った海外旅行中の事故でルーメイが亡くなる。それから、ルオランの様子がおかしいとリョウに言う婚約者。
婚約者は、事故で亡くなったのはルオランでルーメイが、なり代わったのではないかと疑っていた。そこで、リョウに確認して欲しいと頼んでくる。

全編を上海ロケで、三浦春馬と、一人二役のリウ・シーシーと、チャン・シャオチュアンのほぼ4人しか登場しないミステリアスな作品。
亡くなったのは、双子の姉妹うちどちらかという話だけで引っ張っていく。
ヒントは青い蝶と五分前にセットされた時計。
それでも分からなかったら、もう1回観ましょう。

<CREDIT>

■出演者:三浦春馬、劉詩詩、張孝全
■監督:行定勲
■原作:本田孝好『真夜中の五分前 five minutes to tomorrow side-A/side-B』
■脚本:堀泉杏
■配給:東映
■2014年/129分

2014年12月27日(土)全国ロードショー
公式ホームページ http://mayonaka5.jp/

(C)2014 “Five Minutes to Tomorrow” Film Partners

<映画バカコラム> 「青い蝶と若返る設定のはなし」

「誰も知らない」や「空気人形」の是枝裕和監督作品「歩いても歩いても」は、長男の命日のために、老いた両親の家に久々に顔を揃えたある一家の一日をスケッチしたホロ苦くも温かな家族ドラマだった。
この作品で、家の中に蝶が入って来ると『死んだ息子が戻ってきた』と母親役の樹木希林さんが、叫びながら捕まえようとするシーンがあった。
その時には知らなかったのだが、蝶には死者の魂の象徴と、キリスト教では“復活”という意味があるそう。

これは、「コッポラの胡蝶の夢」という作品を見たときに、資料に書いてあった。
「コッポラの胡蝶の夢」は、ティム・ロスが演じる雷に当たった男がどんどん若返っていくという、ブラッド・ピット主演の「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」と似たような設定の物語だった。
かなり前になるけど日本でも「飛ぶ夢はしばらく見ない」(1990)という石田えりが若返っていく作品があり、調べてみたらなんと原作が山田太一だったのに驚いたことがある。

さて、はなしを蝶のはなしに戻して、韓国映画の「永遠の魂」では冒頭に蝶が飛んでくるところから始まる。
物語は、教授の部屋に蝶が飛んできて、それを追いかけると部屋に生徒が何人かいる。そこで教授は生徒達に初恋の話をせがまれ、大学生時代に体験した不思議な出来事を語り始めるという回想ものだった。
だが、実はその生徒達は事故に巻き込まれていて救出を待っている死の境にいた魂を、教授が話をする事で励ましていたというオチだった。

F4のヴィック・チョウが映画デビュー作に選んだのは、ジョニー・トウが監督した香港映画『蝴蝶飛』(原題)だった。
この作品は、恋人同士が些細な諍いを原因に喧嘩をしてしまった矢先、事故に遭ってヴィック・チョウが演じるアトンは帰らぬ人となってしまう。
しかし3年後に、恋人の前に現れて離れないという「ゴースト ニューヨークの幻」を思い出すような作品なのだが、日本でのタイトルは「僕は君のために蝶になる」だった。

蝶を扱った作品は何故かアジア映画に多く、なんとあのキム・ギドグ監督の「悲夢」にも蝶が使われている。
この作品は、オダギリジョーとイ・ナヨン主演の幻想的なラブストーリーで、不思議な夢に翻弄される男女の切ない運命を幻想的なタッチで綴る不思議な作品だった。



そう考えると、フランス映画「潜水服は蝶の夢を見る」ってタイトルが、かっこ良くみえる。
日本の「私は貝になりたい」も、タイトルを「私は蝶になりたい」にすれば良かったのにね。

シネマナビゲーター木香圭介

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2015年2月5日 by p-movie.com

ベイマックス



(C)2014 Disney. All Rights Reserved.



物語の舞台は、サンフランシスコの地形をもとに、東京を融合させたかのような架空都市、サンフランソウキョウ。随所に日本の影響がみられるこの都市は、東西の文化が見事に融合し、最新技術分野の頭脳とも言える人材が集まっている。幼いころに両親を亡くした14歳の天才少年ヒロは、唯一の理解者である優しい兄のタダシと共に、母親代わりの叔母、キャスの家で暮らしていた。しかし、兄のタダシは謎の大爆発事故によって帰らぬ人となり、ひとりぼっちになった彼は深く心を閉ざしてしまう…。そんなある日、傷心のヒロの前に現れたのは、白くて丸くて大きな、フワプニョボディの“ベイマックス”。それは、亡き兄タダシが人々の心と体の健康を守るために開発したケア・ロボットだった。

「どのくらい痛いですか?」
「泣きたい時は泣いていいのですよ」

ベイマックスはヒロの声なきSOSをキャッチする。こうして、大きな悲しみを抱えたヒロと、彼を一途にケアするベイマックスとのおかしな関係が始まった…。

だが、あることがきっかけとなり、タダシの死に不審を抱いたヒロは真相を究明しようとその謎を追っていく。彼が世界を揺るがす巨悪の脅威にさらされた時、隣にいるのは戦闘意欲ゼロの、癒し系ベイマックスとヒロの仲間たち。果たして優しさで世界を救えるのか??
だが、ヒロはまだ知らなかった。兄タダシがベイマックスに託した本当の“使命”を!

監督は『くまのプーさん』のドン・ホールと『ボルト』のクリス・ウィリアムズ。ドン・ホールは「いい加減な“日本”テイストをサンフランソウキョウへ持ち込みたく無い」と決め、ディズニー・アニメーション・スタジオで長年働く日本人トップクリエイターのマット鈴木を始めとする30人以上のチームが<日本の要素を真剣に注ぎ込んだ住みたい街>“サンフランソウキョウ”を創りあげたという。日本語の看板や電柱、自動販売機などのディテール。家並みが創り出す東京のどこかありそうな街角。ネオン輝く夜景などデジャヴをかもし出しながら独創的な世界を創り上げている。

マット鈴木は「このスタジオ(ディズニー)には日本のアニメーションやカルチャーに影響を受けているクリエイターがとても多い。もしかしたら僕より詳しいかも(苦笑)」と語るように、ディズニーのクリエイターたちは、日本のアニメや造形美、東京の風景に日頃より影響を受けているという。

また、「僕らは若い頃に日本文化の影響を受けた最初の世代だ」と語るクリス・ウィリアムズは、「優しく心に響くストーリーという意味で『となりのトトロ』参考にしている」と語る。彼らは映画の舞台設定から、ベイマックスのキャラクター・デザインに至るまで、様々に日本文化の精神を取り入れた本作を、「日本文化への恩返し」とも表現する。でも考えてみれば、トトロはプーさんの影響を受けたと思う。
ディズニーアニメへのオマージュ→日本文化への恩返し→そして共に更なる高みへ!何か日本人として嬉しくなるのは私だけではあるまい。

ところで、本作はマーベルコミックスのヒット作「BIG HERO 6」(ベイマックスは邦題、原題はBIG HERO 6)をもとに製作されたディズニーのアドベンチャー作品でもある。原題からもわかるが、『X-メン』、ディズニーなら『Mr.インクレディブル』、元をたどれば日本の戦隊物『ゴレンジャー』みたいなヒーローチームの話でもあるのだ。事実、物語の後半はまさにアクションヒーロー映画である。(仲間たちも合わせて6人(6キャラクター)で戦うのだ。)

『Mr.インクレディブル』はアクションヒーロー映画であったが、国内的には家族の絆、愛情路線で宣伝されていたし、前作『アナと雪の女王』の原題は『FROZEN』。これは邦題を決めた方の“言葉の妙”に脱帽。内容そのままに『アナと氷の女王』などとしなかったことにより、耳触りがよく、おとぎ話的、略しても親しみやすい、最高の邦題だったと思う。そもそも邦題しかり、宣伝方法しかり、国内向けにどのような方向性で宣伝すれば良いのかは配給会社にとって難問である。

今回、ベイマックスは、AIの曲をバックに泣ける感動作品として宣伝されているが、感動路線の宣伝を見て「ベイマックスは泣く映画」と思う方が多いだろう。しかし後半のアクション路線で「アレッ?」と感じる方がこれまた多いと思う。実は本作はマーベルファンが見ても大丈夫な由緒正しきマーベルヒーロー映画としても仕上がっているのだ。でもさすがディズニー。前半で描かれたヒロとベイマックスの面白おかしな関係が、後半に来てジャブのように効いてきて、ラストでやはり泣かせてくれる。ということは感動路線で間違いはないのかも?

『白雪姫』から『アナと雪の女王』へ続く、時代を超えて愛される続けるディズニーの名作の歴史に、『ベイマックス』が、今、新たな1ページを飾る。

<CREDIT>

■声の出演
ヒロ: ライアン・ポッター
ベイマックス: スコット・アツィット
フレッド: T・J・ミラー
ゴー・ゴー: ジェイミー・チャン
ワサビ: デイモン・ウェイアンズ・Jr
ハニー・レモン: ジェネシス・ロドリゲス
タダシ: ダニエル・ヘニー
キャスおばさん: マーヤ・ルドルフ
アリステア・クレイ: アラン・テュディック
キャラハン教授: ジェームズ・クロムウェル
■製作総指揮:ジョン・ラセター
■監督:ドン・ホール/クリス・ウィリアムズ
■配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
■2014年/アメリカ/108分
■原題:『BIG HERO 6』

2014年12月20日(金)全国ロードショー
公式ホームページ http://www.disney.co.jp/movie/baymax.html

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【ライター】戸岐和宏

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2014年12月15日 by p-movie.com

フューリー



(C)Norman Licensing, LLC 2014



1945年4月、ドイツに侵攻して熾烈な地上戦を展開する米軍の中に、“フューリー”(激怒)”と名付けられた一輌の戦車があった。フューリーは車長ウォーダディー(ブラッド・ピット)のもと、度重なる激闘を勝ち抜き、今なお奇跡的な進撃を続けていた。

そんなチームに、戦闘経験の一切ない新兵ノーマン(ローガン・ラーマン)が副操縦手として配置される。ウォーダディー以下、砲手バイブル(シャイア・ラブーフ)、装填手クーンアス(ジョン・バーンサル)、操縦手ゴルド(マイケル・ペーニャ)、3人の部下に手荒く迎えられたノーマンは、想像をはるかに超えたルールやモラルが通用しない戦場の凄惨な現実を目の当たりにしていく…。

市街戦におけるドイツ軍少年兵(ヒトラーユーゲント)たちとの戦闘。米兵救出のための、対戦車砲陣地での戦闘。やがて、行く先々に隠れ潜むドイツ軍の奇襲を切り抜け進軍する“フューリー”の乗員たちは、世界最強のドイツ軍ティーガー戦車との死闘を繰り広げることとなる。
さらには敵の精鋭部隊300人をたった5人で迎え撃つという、絶望的なミッションに身を投じていくのだった…。

プロデューサーとして映画界のトップに立ち続けるブラッド・ピット。彼が類い希なストーリーとキャラクターに惚れ込み、主演と製作総指揮を熱望した最新作が『フューリー』だ。敗戦色が濃厚となり、なりふり構わぬ抵抗を繰り広げるドイツ軍。戦争末期、一輌の戦車が直面する一日の出来事に焦点を絞った本作はフューリーの乗員5人がたどる想像を絶する運命を克明に映し出した。ブラッド・ピットは、歴戦の勇者でありながら複雑な思いを内に秘めた“フューリー”の指揮官ウォーダディーを熱演。そんなカリスマ的な指揮官と乗員たちの固い絆、新兵ノーマンの葛藤と成長のドラマは観る者の心を揺さぶらずにはおかない。

「ディテールが大事だ」とデヴィッド・エアー監督は言う。「観客が戦場のことを完全に理解できていなくとも、細部まで気遣った映画だと過去にテレビで見たニュースリールのイメージと合致する。そういうリアリティを追求したい」本作には軍事アドバイザーが3人、大戦中に機甲師団に従軍した退役軍人が4人つき自らの知識や体験を伝授したとのこと。撮影に入る前、戦車の種類から、対戦車砲のタイプ、作戦で使われた兵器、軍服、兵士たちの髪形に至るまで徹底的に調べ上げ再現された。

登場する戦車は全て実物。綿密な時代考証に基づき再現された米軍のシャーマン戦車、ドイツ軍のティーガー戦車(世界で唯一稼働可能な、イギリスはボービントン戦車博物館のティーガー戦車。田宮模型のティーガー戦車を作ったことがあるみなさん!ハリボテでない本物のティーガー戦車が登場!)との対決シーンは、本物が使用された史上初の作品!もちろん映画史上に残る迫力の名場面となった。

さて、本作の魅力を映画ライターとして、共感できる視点から映画としての良さを紹介したが、ミリタリーマニアの視点(本物のティーガー戦車見たさに映画館に足を運ぶあなた!)からこの作品を見ると戦術的に?となる場面、もしくはニヤリとする場面があることも述べておかなくてはならないだろう。

孤立無援化した米兵救出のためにフューリー以下戦車隊で向かい、遭遇した対戦車砲に対して、突っ込んでいって制圧してしまう。映画としては圧巻の(なおかつ興奮の)戦闘シーンであるが、実際、戦車兵にとって何が一番怖いかと言えば、それは対戦車砲であって、念入りに隠蔽された対戦車砲を見つけるのは非常に難しく、突然やられかねなかったからである。(今回の強敵ティーガー戦車を駆り、戦車138輌を撃破した戦車エース「ミハエル・ヴィットマン」も戦車より対戦車砲の方が怖かったと漏らしていたほど…。)だから遭遇した場合に、一度も後退することなく、猪突猛進することはまずないのだ。まぁ映画としての緊迫、迫力の場面演出と考えれば○であるが…。しかし、対戦車砲を粉砕するのにそこは徹甲弾ではなく、榴弾を使うところは非常にリアルだし、また、対人用に白燐弾を使用した場面も評価でき、「こだわってるね」と感心させられる。さらには、ウォーダディーの愛銃が、ドイツ軍から捕獲したMP40短機関銃ではなくMP44突撃銃というのもかっこいいので◎。

残念!ティーガー戦車との死闘に関しては個人的にはもっと尺が欲しかったところ。何と言っても世界初の登場。動いているところがもっと見たかった!まぁこれだけが本作の売りではないので仕方ないか。シャーマン戦車の徹甲弾を弾き返すところなど思わず興奮だが、対戦車砲に対するがごとく、4輌いるからって真正面から対峙して戦ってはいけない。当時はティーガー戦車に遭遇したら逃げる!!というのが鉄則で、もし味方が4~5輌いたら、散開して四方八方から砲弾を撃ち、犠牲を出しつつも仕留められたというのが史実、逆に言えばいかにティーガー戦車が最強だったかということ。リアル感をもっと出すなら、脱兎のごとく散開し、四方八方から必死で砲弾を撃ちまくり、やっと仕留める。しかし生き残ったのはフューリーだけ。という荒涼感漂う演出ならば◎だったかな…。

他にも、クライマックスの十字路の戦いにおける武装SSとの戦闘における、やたら弱いパンツァーファスト(対戦車擲弾発射器)などの問題もある。

が、いずれにしてもこの『フューリー』は映画としての出来はピカイチ。深遠な人間模様、極限のスペクタクル、圧倒的な臨場感とリアリティを極めた戦車バトルアクションを融合させ、あらゆる観客の胸に響くエポック・メイキングな超大作であることに間違いはない!!

<CREDIT>

■出演者:ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサル
■製作総指揮:ブラッド・ピット
■監督:デヴィッド・エアー
■配給:KADOKAWA
■2014年/アメリカ/135分
■原題:『Fury』

2014年11月28日(金)全国ロードショー
公式ホームページ http://fury-movie.jp/
facebook https://www.facebook.com/fury.jp

(C)Norman Licensing, LLC 2014

【ライター】戸岐和宏

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2014年11月19日 by p-movie.com