イントゥ・ザ・ウッズ


(C) 2015 Disney Enterprises, INC. All Rights Reserved

「子を授かりたければ、4つのアイテムを森から持ち帰るのだ」
魔女にかけられた呪いのせいで子供に恵まれなかったパン屋の夫婦は、呪いを解くために4つのアイテム“血のように赤いずきん”“ミルクのように白い牝牛”“黄金に光り輝く舞踏会の靴”“トウモロコシのように黄色い髪”が必要だと告げられ、彼らは子供を授かるという願い(wish)を叶えたい一心で森へと向かった。

時を同じくして、同じ王国に住む赤ずきん(グリム童話)は森に住むおばあさんのお見舞いへ。貧乏暮らしをしているジャック(イギリスの童話)は隣町に大事な牛を売りに出かけていく。意地悪な継母とその娘たちにいじめられていたシンデレラ(ペロー童話集)はお城の舞踏会で王子に見初められることを祈る。実はパン屋の主人の妹でありながら、魔女に連れ去られ森の中の塔に閉じ込められて外の世界を知らずに暮らすラプンツェル(グリム童話)は、いつか自由の身になれることを願いながら暮らしていた…。


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赤ずきんはオオカミに騙されて食べられてしまうが、通りがかったパン屋の主人に助けられ、「誰もが善人ではない」と学んで少し大人になる。ジャックは牛と交換にパン屋から手に入れた魔法の豆から生えた巨大な豆の木のおかげで、巨人の国から大金を得ることに成功する。シンデレラは舞踏会で王子の心を射止めて結婚する。ラプンツェルはもう一人の王子(シンデレラの王子の弟)と外の世界で結ばれる。パン屋夫婦を通してそれぞれが森の中で出会い、全員の願い(wish)が叶った。全てがハッピーエンドで終わるかと思ったその時、王国に衝撃の事件が訪れ、事態が一変する。願いを叶えたはずのおとぎ話の主人公たちを待ち受けていた、驚くべき運命とは?

『イントゥ・ザ・ウッズ』はブロードウェイの生ける伝説、『ウエスト・サイド物語』のスティーヴン・ソンドハイムのロングラン・ミュージカルをディズニーがついに映画化。彼が自ら手掛けたオリジナル舞台の楽曲に加え、ディズニーで描かれる映画のために新曲も提供し“おとぎ話の主人公たち”が、それぞれの願い(wish)を叶えるため迷い込む“魔法の森”を魅力的に描き出すミュージカルとして完成した。

本作の魔女役にはオスカー常連のメリル・ストリープ(初めての魔女役)。赤ずきんのオオカミ役にジョニー・デップ(究極のコスプレイヤーぶりは健在)というハリウッドのトップスターが名を連ね、さらに、シンデレラ役にはアナ・ケンドリック、その王子役にクリス・パイン、さらにパン屋の妻役にエミリー・ブラントが抜擢されるなど、名実ともに超豪華キャストが集結し、作品を完璧なものに仕上げた。


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おとぎ話の主人公たちが同じ王国内に住んでいたというユニークな設定がこれから始まる物語の楽しさを感じさせ、「~めでたし、めでたし」のハッピーエンド…で終わらず、新たな物語が突然始まるところが更に笑える。『赤ずきん』、『ミッキーのジャックと豆の木』、『シンデレラ』、『ラプンツェル』、ディズニーには元になったアニメ作品が存在するが、できれば、本作の前に復習しておくことをお勧めしたい。「実写化されても、やはりディズニーだね」と再度感動できるはずだ。また、アニメ版とは少々違ったキャラクター設定にも気づくかもしれない。今回、私が4人の主人公の中で注目したいのが、シンデレラ。今までは、継母とその娘たちにいじめられても、耐える、心優しいまっすぐな女性という受け身なイメージのヒロインであったが、今回は現代的で欠点もある存在として描かれている。例えば、王子の愛を確かめられるように意図的に靴を落としているのだ。おとぎ話にも時としてリアルな設定が必要ということか? ディズニー次回作、実写版の「シンデレラ」ではどのように描かれているのかは実に楽しみなところである。

本作『イントゥ・ザ・ウッズ』はおとぎ話の“その先”を描いた大人のためのミュージカルである。王国内の“魔法の森”を舞台の中心にしたグランドホテル方式の作品だが、華やかでエンターテイメント性にあふれた作品である一方で、実はその奥に「人生は“願いがかなってめでたし、めでたし”だけでは終わらない。願いがかなった後も続いていく長い人生において、本当の“幸せ”とは何か?」というメッセージを持っている。

しかし、「“幸せ”とは何か?」という問いかけの答えは一つだけではない。だからこそ『イントゥ・ザ・ウッズ』はおとぎ話を卒業し、人生の深みを知った“大人のための”ミュージカルなのである。ディズニーは『アナと雪の女王』『マレフィセント』で「王子と結ばれてめでたし、めでたし」という王道のハッピーエンドを覆し、「現代の“愛”」とは何かと問いかけた。そして『イントゥ・ザ・ウッズ』では「現代の“幸せ”」とは何かを我々に問いかける。

<CREDIT>

■出演者
メリル・ストリープ、エミリー・ブラント、ジェームズ・コーデン、 アナ・ケンドリック
クリス・パイン、ジョニー・デップ、リラ・クロフォード
■監督:ロブ・マーシャル
■配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
■2014年/アメリカ/125分
■原題:『Into the Woods』

2015年3月14日(土)全国ロードショー
公式ホームページ http://www.disney.co.jp/movie/woods.html

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【ライター】戸岐和宏


カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2015年2月27日 by p-movie.com