クリクリのいた夏

この夏、見逃せないほのぼの作品 ★★★★★
[99/仏] 1h55 7月8日よりBunkamura ル・シネマにてロードショー

監督:ジャン・ベッケル
出演:ジャック・ヴィユレ ジャック・ガンブラン アンドレ・デュソリエ ミシェル・セロー
配給・宣伝:シネマパリジャン

1930 年代のフランス片田舎マレと呼ばれる沼地に住む人々の生活を描いた幸せな気持ちにさせてくれる作品。監督は「殺意の夏」「エリザ」のジャン・ベッケル。主人公ガリスに今村昌平の「カンゾー先生」に出演していたジャック・ガンブラン。隣人リトンに「奇人たちの晩餐会」(「Webパーフェクト・ムービー・ガイド」にレビューあり)のジャック・ヴィユレがまたもや少しオツムが弱い役で登場している。タイトルのクリクリとは、リトンの末娘の名前で成長して幼い日の思い出を語る構成になっている。本国では200万人を動員するビッグ・ヒットを記録している。

独り者のガリスとリトンの家族は、マレの畔で生活をしていた。ガリスは大戦の復員兵で戦場で受けたショックからまだ心の傷が癒えない。彼は戦場から引き上げる途中、偶然この沼地を通りかかったときに家の前で苦しんでいる老人を助けて最期を看取ったことから、何となしに暮らし始めた。2人は、コンビを組んで鈴蘭でブーケを作ったりキノコやカタツムリを売ったり、金持ちでエレガントなアメデの紹介で上品なマダムの庭の手入れをして日々の糧を得ていた。ある日、沼にお爺さんと孫がやって来る。お爺さんはかつてはマレに住んでいたペペと孫のピエロで、ペペは事業を成功させて大金持ちになっていたが沼での生活を懐かしんで訪ねてくるようになり、ピエロもクリクリと仲良くなっていった。そんな平穏な日々も束の間、リトンのせいで監獄へぶち込まれていたボクシングのチャンピオンが出所して、リトンに復讐しにやってきた。

「奇人たちの晩餐会」のジャック・ヴィユレのオバカ演技が、また見れるというだけでも嬉しくなってしまう作品。彼らの暮らしぶりは決して豊かではないが、自由に時間を謳歌しているのと温かい人々のふれ合いを見ていると自分の心も浄化されて幸せな気持ちにさせてくれる。この夏は、何が何でも見てほしい作品。

.

カテゴリー: ヨーロッパ | 映画レビュー

2000年7月10日 by p-movie.com

あの子を探して

99年ヴェネチア映画祭グランプリ受賞 ★★★★☆
[99/中国] 1h46 7月1日より渋谷bunkamura ル・シネマにて公開

監督:チャン・イーモウ
出演:ウェイ・ミンジ チャン・ホエクー
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
宣伝:樂舎

中国の巨匠チャン・イーモウが2度目のヴェネチア映画祭金獅子賞(グランプリ)に輝いた心温まる作品。今までの監督作品はコン・リー主演の芸術作品だったが、今回は一人もプロの俳優を使うことなく全て素人をキャスティングして作り上げた、シンプルだがテーマ性の強い感動作品である。なお、この作品は、コロンビア ピクチャーズ フィルム プロダクション アジア提供でソニー・ピクチャーズが初めてミニ・シアター系で公開する映画になった。

中国の田舎町にあるシュイチアン(水泉)小学校のカオ先生が病気になった母親の看病をするために、村長は代わりに子供たちの面倒を見る代理教員に中学も満足に卒業していない13歳の女の子ウェイ・ジンミンを連れてくる。小学校は40人いた生徒が家庭の事情により、今では1年から4年まで28人になっていた。もし留守の間に誰も辞めなければ報酬を10元増やすと約束され、ウェイはしぶしぶ引き受ける事にする。彼女は一日の大半を教室のドアの外に座って生徒が逃げ出さないように見張って過ごすことになった。しかし早くも事件勃発、なんと足の速い女の子がスカウトされて町に行ってしまったのだ。そして追い打ちをかけるようにクラスの悪ガキでチャン・ホエクーが家計を助けるために町に出稼ぎに行ってしまった。これでは報酬が貰えない。しかし町に行くにはバス代がいるしお金がない。ウェイは生徒と煉瓦運びをしてお金を稼いでどうにかチャンを捜しに町に行く。しかし、チャンは行方不明になっていた。チャンは何処に行ったんだろう? ウェイのあてのない旅が始まった。

なんともイラン映画のようなシンプルなストーリーに、これでグランプリとはチャン・イーモウずるいな、と思ったがやはり少年を捜す方法がいかにも広い中国だけあって納得。しかも貧しい村では学校の備品もままならなかったり、家庭の事情から満足に学校にも行けない子供が多いと社会情勢までも取り入れたテーマ性に感銘を受けた。まもなく監督の記者会見の模様をホームページに掲載しますので興味のある方はそちらもご覧下さい。

.

カテゴリー: アジア | 映画レビュー

2000年7月3日 by p-movie.com

ザ・ハリケーン

無実の天才ボクサーの奇跡の実話映画 ★★★★☆
[99/米] 2h25 6月24日より日比谷映画劇場ほか全国東宝洋画系にてロードショー

原作:ルービン”ハリケーン”カーター
監督:ノーマン・ジュイソン
出演:デンゼル・ワシントン ヴィセラス・レオン・シャノン デボラ・カーラ・アンガー
共同配給:ギャガ・ヒューマックス/東宝東和
宣伝:レオ・エンタープライズ

ミドル級ボクシングチャンピオンのルービン・”ハリケーン”・カーターに起こった冤罪事件をデンゼル・ワシントンが演じた奇跡の実話映画。監督は36年に及ぶ監督生活の中で45部門のオスカー候補になる傑作を生んできたノーマン・ジュイソン。本作でもデンゼルが主演男優賞にノミネートされている。共演は「飛べないアヒル2」のヴィセラス・レオン・シャノン、「クラッシュ」「ゲーム」のデボラ・カーラ・アンガー、「スライディング・ドア」「ハムナプトラ」のジョン・ハンナ、「ファントム」「スクリーム」シリーズのリーヴ・シュレイバー。

稲妻パンチといわれた素早いパンチでハリケーンと呼ばれていたボクサーのルービン・カーター(デンゼル)は、1963年にはウェルター級のチャンピオンになった。しかし、その3年後に彼は、たまたま通りかかった殺人事件現場で容疑者として逮捕され、人種偏見を持った刑事の息のかかった裁判により有罪判決を受け終身刑を宣告されてしまう。自分は無実だからだと囚人服の着用を拒み自伝の執筆を続け、74年に「16R」を出版。自伝は大きな反響を呼び、ボブ・ディランやモハメッド・アリにより釈放運動が起こるが、再審で再度有罪判決を受けてしまう。カーターは妻とも離婚をして自分と社会の繋がりを完全に断ち切ってしまう。それから数十年が経ち、誰の記憶からもハリケーンの名が忘れられた頃に古本市でレズラ(レオン)という黒人の少年が、「16R」を買い、感動を受けカーターに手紙を送ると驚いたことに返事が戻ってきた。こうして始まった二人の文通。そしてレズラの保護者であるリサ(デボラ・カーラ・アンガー)、テリー(ジョン・ハンナ)、サム(リーヴ・シュレイダー)も力になり再び再審請求に動き出す。そして30年目にして連邦裁判所というリングでラスト・ラウンドが始まった。

無罪確定から10年が過ぎてからの映画化だったが、この事件を全く知らなかったので素直にストーリーに入り込めた。映画は無実の黒人VS人種差別の白人刑事と、生い立ちに多くの共通点のあったカーターとルービン少年とのやりとりがメインになっているので、後半の再審の描き方に物足りなさを感じるかもしれない。これはどうやらルービン少年と同じ世代に見てもらおうという配慮のようである。でも 45歳にしてボクサー体型になり挑んだデンゼルのボクシングシーンは凄いし、ラストは充分に感動に浸れる。

.

カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2000年6月26日 by p-movie.com

グラディエーター

死を賭けた壮絶な闘い ★★★★★
[00/米] 2h35 6月17日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹洋画系にてロードショー

監督:リドリー・スコット
出演:ラッセル・クロウ ホアキン・フェニックス コニー・ニールセン オリバー・リード
配給・宣伝:UIP

「インサイダー」で20kgも体重を増やしたラッセル・クロウが、体重を元に戻して挑んだローマ帝国を舞台にした壮大なスペクタクルドラマ。共演はリバー・フェニックスの弟で「8mm」のホアキン・フェニックスと「ミッション・トゥー・マーズ」でティム・ロビンスと華麗な宇宙ダンスをしていたコニー・ニールセン。監督は最近どうも不調だったリドリー・スコットが、デビュー作「デュリエスト/決闘者」を思い出させてくれるような原点に戻り、「エイリアン」や「ブレード・ランナー」でこだわった美術デザインや視覚効果を駆使して楽しませてくれる。

西暦 180年の大ローマ帝国、時の皇帝マルクス・アウレリウスに信頼を置かれていたアエリウス・マキシマス将軍(ラッセル)は、勢力を拡大するために壮絶な戦闘を繰り広げていた。そこへ駆けつけたのは、皇帝の息子コモドゥス(ホアキン)と姉のルッシラ(コニー)。次期皇帝の座を信じていたコモドゥスだったが次期皇帝はマキシマスを考えているとアウレリウスに告げられ、コモドゥスは涙ながらに父親アウレリウスを殺害してマキシマスを抹殺する。間一髪、死んだと見せかけて難を逃れたマキシマスであったが、家族は殺され奴隷の身として実力者だけが生き残れる剣闘士(グラディエーター)として巨大コロシアムで観衆を楽しませる見せ物奴隷になってしまう。生き残るためには勝ち続けなければいけない死闘ではあるが、持ち前の将軍魂を発揮して観衆はマキシマスを英雄として迎えた。その存在は観戦していたコモドゥス皇帝も認めて仮面を取るように命ずる。遂にマキシマスはコモドゥスの前で仮面を脱ぐ。処刑したはずのマキシマスが生きているとわかり、コモドゥスはまたもや抹殺を企てる。

80年代は甲冑モノの戦闘劇は結構作られていたが、制作費がかかるのと人気がなくなったことで最近はあまりお目にかかってなかったが、特殊効果の技術により撮影が以前よりも楽になったようで制作された。しかし巨大なコロシアムの建設やセットなどで1億ドルは掛かっている(でもあっという間に1億ドルを突破して、まだアメリカでヒット中)。オープニングの大規模の戦闘シーンで「ジャンヌ・ダルク」を遥かに超えて、メインの死闘を繰り広げる剣闘シーンは驚きの連続。2時間35分はあっという間です。ぜひ大画面で見て下さい。
(気まぐれ飛行船)

.

カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2000年6月18日 by p-movie.com

ミラクル・ペティント

スペイン産オバカ映画 ★★★★☆
[98/スペイン] 1h46 6月10日より渋谷シネクイントにてロードショー

監督・脚本:ハビエル・フェセル
出演:ルイス・シヘス シルビア・カサノバ ハビエル・アリェル エミリオ・ガビラ
配給:パルコ
宣伝:サンダンス・カンパニー
宣伝協力:メディアボックス

スペインからファミリー・ファンタジーSFドラマの総天然色ブっ飛びムービーがやってきた。スペインといえば、アントニオ・バンデラスやアンディー・ガルシアのような濃い作品や「オープン・ユア・アイズのようなサスペンス映画だけかと思ったら、やはりこういうオバカ映画もあるんだと知り、さすが世界中の国の映画が一番見れると思われる日本だなと改めて確認した。監督は CMクリテーターで長編は1作目、徹底的にディテールにこだわる作りはクリエーターならではか。早くも次回作が楽しみ。

ペティント少年の家訓はシアワセナな家族を築くこと、そして夢は大家族のお父さんになり子供達が強くたくましく成長する様子を見守るのが願いだった。そしてペティントは幼なじみで盲目のオリビアと結婚して25年に1度急行電車が通り過ぎる脇のド田舎にスィートホームを構える。この地で二人はひたすらコウノトリがキュートな我が子を運んできてくれるのをひたすら待っていた。それなのに子供の出来る気配は全くない。それもそのはず二人は子供の頃に仕入れた「タラリン タラリン」で赤ちゃんが出来るという間違った知識のまま、その行為を繰り返していたのであった。そして50年が過ぎて老人になった二人の前に遂にコウノトリが飛んできたと思ったら鉄の塊が落ちてきた。やってきたのは身長1メートルぐらいの成人した男性二人。なんとこの二人は旅行中の火星人だったが、ペティント夫婦は遂に子供が出来たと大喜びする。しかしこれはミラクルのほんの序章にすぎなかった。

本編が始まったかと思ったらいきなりニュース映画が始まり、唖然としていると何事もなかったかのように本編が開始され、ニュース映画の登場人物が本編に登場するという複線のはりかた。そして本編終了後にもニュース映画で終わるという遊び心がたまらない。まったく先の読めない展開に圧倒されっぱなしで完全にこの作品にはまってしまった。宇宙服でご来場の方は1000円で見れるというオバカ制度もたまらない。さあみんな宇宙服を着て劇場へレッツ・ゴー。

.

カテゴリー: ヨーロッパ | 映画レビュー

2000年6月12日 by p-movie.com