たそがれ清兵衛

山田洋次監督初の時代劇 ★★★★☆
[02/日]1h56 11月2日から22日まで丸の内ピカデリー1、23日から丸の内プラゼールほかにて全国公開

[製作]中川滋弘、深澤宏、山本一郎
[原作]藤沢周平(新潮文庫刊)
[監督]山田洋次
[脚本]山田洋次、朝間義隆
[出演]真田広之 宮沢りえ 小林稔侍 大杉 漣 吹越 満 田中 泯 岸恵子 丹波哲郎
[配給]松竹株式会社
[宣伝]ピー・ウイング

「男はつらいよ」や「学校」シリーズの巨匠、山田洋次監督が77本目にして初の本格時代劇に挑戦。原作は文庫本の総発行部数が2300万部を超え、今もなお圧倒的な人気を誇る時代小説の藤沢周平。出演は、次回作「ラスト・サムライ」でトム・クルーズとの共演の真田広之、香港映画「遊園驚夢・華の愛」でモスクワ国際映画祭の最優秀女優賞に輝いた宮沢りえ、寅さんのマドンナや「かあちゃん」の岸恵子、「学校III・IV」の小林稔侍、「SFサムライフィクション」の吹越 満、「DRIVE」の大杉 漣、日本映画界の重鎮・丹波哲郎、さらには世界的な舞踊家である田中泯が、息を呑む迫力ある演技を披露し銀幕デビュー。

幕末の庄内、生活の苦しい平侍の井口清兵衛は、同僚の付き合いなどを一切断って帰り、毎日家事と内職に励んでいる。妻を労咳で亡くし、二人の娘と病気の母親と暮らしている為だったのだが、同僚達はそんな清兵衛をからかって、陰で「たそがれ清兵衛」などと呼んでいた。そんな清兵衛が、友人の妹・朋江の婿で酒乱で横暴過ぎる豊太郎と、剣が苦手な友人の代わりに決闘をして勝った事が広まってしまう。この事がきっかけで、清兵衛は藩主の反対派役を討てという、家族に背を向けた生死を賭けての果し合いをしなくては、いけなくなってしまう。

間もなく侍の時代が終わろうとしている幕末。前半は清兵衛の貧しい生活話と、暴力夫に悩まれる幼なじみとのメロドラマだが、後半は武家政治に巻き込まれた清兵衛の不条理を描いたドラマ。クライマックスの果し合いは鳥肌が立つほどの迫力。この作品も東京国際映画祭で上映しても良かったかも(クロージングが、同じ松竹の「壬生義士伝」になったので外したんだと思うが)。秋に、お勧めの1本です。

オフィシャルサイト: http://www.shochiku.co.jp/seibei/

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2002年11月4日 by p-movie.com

トリプルX

コードネームは“xXx” ★★★★☆
[02/米]2h04 10月26日より日劇3ほか全国東宝洋画系にて全国ロードショー
[製作]ニールー・H・モリッツ
[監督]ロブ・コーエン
[脚本]リック・ウィルクス
[出演]ヴィン・ディーゼル アーシア・アルジェント マートン・コーカス サミュエル・L・ジャクソン
[配給]東宝東和
[宣伝]P2

[21世紀のヒロイズム、スパイ新世代:Triple X 全米公開2002年8月9日]
肉体派俳優の高齢化によりハリウッドは今、若手の新アクションスターを求めている。ワイヤーアクションによる「スパイダーマン」のトビー・マグワイヤーや、プロレス界からのザ・ロックと様々だが、ここに来ていかにもアメリカらしいスパイ映画が登場した。すでにシリーズ化も決まった主演を射止めたのは、「ピッチ・ブラック」「ワイルド・スピード」のヴィン・ディーゼル。共演はダリオ・アルジェントの娘で監督経験もあるアーシア・アルジェント、「ロード・オブ・ザ・リング」のマートン・コーカス、「チェンジング・レイン」のサミュエル・L・ジャクソン。監督は「デイライト」「ドラゴンハート」「ワイルド・スピード」のロブ・コーエン。

訓練されたプロでは見破られると悟った米国国家安全保障局は、「毒には毒を」で飛び切りのワルを起用するという思い切った行動に。白羽の矢が立ったのは、スカイダイビング、スノーボード、モトクロスの自らの映像を納めたビデオをインターネットで販売して人気を得ていた首にxXxの刺青があるザンダー・ケイジ。彼は政府には反抗的だが愛国心があり、驚くべき洞察力で見事試験をパス。就いた任務は、プラハに居るテログループが真相を知っていると思われるソ連が開発した危険な生化学兵器の行方を探る潜入捜査だった。ザンダーの運動能力に加えて冷静な判断力と度胸の良さが発揮される大活躍が始まる。

ヒーロー映画としてやたらと作られるようになったスパイアクション映画。若い秘密兵器を製造しているQのような人物も登場するという007を思いっきり意識した作品。無理に当てはまれば、サミュエル・L・ジャクソンがMってとこか。ただ1つ違うのは主役のザンダー。ボンドのような紳士ではなく、ストリートのワルだったアウトローをヒーローにしてしまうのが、いかにもアメリカらしい。ここはヴィン・ディーゼルにガタが来るまでシリーズ化して欲しい。

オフィシャルサイト: http://www.xxx-triplex.com/index.html

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2002年10月28日 by p-movie.com

OUT

20世紀フォックスが邦画を配給 ★★★★☆
[02/日]1h59 10月19日より丸の内プラゼ-ルほか全国松竹・東急系にて公開

[製作]古澤利夫 木村典代
[原作]桐野夏生(講談社刊)
[監督]平山秀幸
[脚本]鄭 義信
[出演]原田美枝子 倍賞美津子 室井 滋 西田尚美 香川照之 間 寛平 大森南朋
[配給]20世紀フォックス(極東)映画会社
[宣伝]20世紀フォックス映画

[スリリングで爽快な脱出活劇:OUT]
TVドラマにもなった桐野夏生の傑作ベストセラー小説が、「学校の怪談1・2・4」「愛を乞うひと」「ターン」「笑う蛙」の平山秀幸監督で映画化。製作は平山監督作品で御馴染みのサンダンス・カンパニーと、ムービーテレビジョン。そしてなんと配給は20世紀フォックス(極東)映画会社。出演は「木曜組曲」の原田美枝子&西田尚美 、「ターン」の倍賞美津子、「金融破滅ニッポン 桃源郷の人々」の室井 滋、「鬼が来た!」の香川照之、「明日があるさ THE MOVIE」の間 寛平、「殺し屋1」の大森南朋、「ほとけ」の千石規子。

香取雅子、吾妻ヨシエ、城之内邦子、山本弥生の4人は、東京郊外にある弁当工場で深夜に働く仲間。雅子は、リストラされた夫や息子ととも会話のない家庭崩壊状態。ヨシエは、亭主に先立たれ寝たきりの姑介護に追われる貧しい生活。邦子は、ブランド品を買い漁りローン地獄生活。弥生は妊娠8ヶ月の体でギャンブルで貯金を使い果たした夫から暴力をふるわれる毎日を送っていた。ある日、弥生から雅子の所へ、とんでもない電話が掛かってくる。弥生が暴力に耐え兼ねて、夫を絞め殺したと言うのだ。子供の為にも捕まりたくないと言う弥生に、なんと雅子は死体を解体して生ゴミとして捨てることを思い付き、ヨシエと邦子を巻き込んで実行する。だが、邦子のずさんな捨て方で死体は発見されてしまう。しかも邦子はローン会社の十文字に喋ってしまい、十文字は雅子に死体処理のビジネスを持ちかけてきた。一方、殺人の容疑を掛けられていたカジノの用心棒だった佐竹は、罪を着せられた復讐にやって来る。

御馴染みの20世紀フォックスのファンファーレが流れた後に、日本映画が上映される時代がやって来た。主婦4人の犯罪劇を扱った作品で、原作後半の内容を大幅に変えて犯罪そのものより4人の女性たちの生き方に焦点を当てた日本映画らしい日本映画。見所は何と言っても、死体をバラバラにするシーン。一歩間違えると洒落にならない引いてしまう所を、そこまで笑かすかとばかりコミカルにしている。追いつめられていく状況の中、カラオケボックスに集まって作戦会議を開いてたのに、歌に夢中になってしまうシーンもなかなかのヒット。平山監督は、いま乗りにノッテイル。

オフィシャルサイト: http://www.movietv.co.jp/out/

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2002年10月21日 by p-movie.com

容疑者

父と子の絆を描くサスペンス ★★★★☆
[02/米]1h48 10月12日より日比谷映画ほか全国東宝洋画系にて全国ロードショー

[製作]マシュー・ベアー
[原案]マイク・マッカラリー
[監督]マイケル・ケイトン=ジョーンズ
[脚本]マイケル・ケイトン=ジョーンズ ケン・ヒクソン
[出演]ロバート・デ・ニーロ フランシス・マクドーマンド ジェームズ・フランコ ジョージ・ズンザ
[共同配給]ギャガ・ヒューマックス
[宣伝]ギャガ・コミュニケーションズ宣伝部

[痛いほど皮肉なストーリー:CITY BY THE SEA 全米公開2002年9月6日]
ピューリッツア賞受賞作家のドキュメンタリー記事を原案に、ロバート・デ・ニーロ主演の刑事サスペンス大作。共演は「ファーゴ」のフランシス・マクドーマンド、「スパイダーマン」のジェームズ・フランコ、「ディア・ハンター」のジョージ・ズンザ、「ボーイズ・ライフ」のエリザ・ドゥシュク、「ワンス・アポン・ア・タイム」のウィリアム・フォーサイス、「ザ・プロフェッショナル」のパティ・ルポーン。監督は「ボーイズ・ライフ」「メンフィス・ベル」「ドク・ハリウッド」「ロブ・ロイ」のマイケル・ケイトン=ジョーンズ。

NY市警察殺人課・敏腕刑事ビンセント・ラマーカは、実の父親が幼児誘拐殺人犯として処刑された過去を持つ。新たな殺人事件を担当したヴィンセントは、その容疑者が離婚した妻との間にできた実の息子ジョーイであると知らされる。そんな中、事件を追っていた相棒警官が殺されてしまった。容疑者はまたしてもジョーイ。ヴィンセントは、家族と仕事とどちらにも正しい選択をするために人生を賭ける事になる。

ストーリーで分かるように、よくある刑事アクションではなく、デニーロの苦悩する演技が見所のエモーショナルなファミリー・ドラマと迫力満点の刑事サスペンス作品。父親に続いて息子まで殺人犯にという苦悩、同僚を殺したのが息子かもしれないのに通夜へ遺族に会いに行く苦悩、恋人にこれからの関係を問いださられる苦悩、息子と恋人の間に出来た子供の世話を押し付けられる苦悩、別れた妻から息子を助けて欲しいと頼まれる苦悩など、久々にデニーロの役者魂が爆発している。これは「ロード トゥ パーデイション」と共にアカデミー賞にノミネートされるかも。

オフィシャルサイト: http://www.gaga.ne.jp/yougisha/

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2002年10月14日 by p-movie.com

ロード・トゥ・パーデイション

自分の息子には人生を与えたかった ★★★★☆
[02/米]1h59 10月5日より日劇1ほか全国東宝洋画系にて全国ロードショー

[製作]リチャード・F・ザナック ディーン・ザナック サム・メンデス
[監督]サム・メンデス
[原作]マックス・アラン・コリンズ&リチャード・ピアース・レイナー
[脚本]デヴィッド・セルフ
[出演]トム・ハンクス タイラー・ホークリン ポール・ニューマン ジュード・ロウ スタンリー・トゥッチ
[配給]20世紀フォックス(極東)映画会社
[宣伝]20世紀フォックス

[組織の掟と愛の再生を描いたアクション叙事詩:The Road to Perdition]
アカデミー主演男優賞に2度輝いたトム・ハンクスと「リプリー」で助演男優賞にノミネートされたジュード・ロウ、そして最後の銀幕のスターことポール・ニューマン。この3人の大スターと「アメリカン・ビューティー」でアカデミー作品・監督賞を獲得したサム・メンデスの夢のようなコラボレーションが実現させ久々のギャング映画が誕生。共演は「ミセス・パーカー/ジャズエイジの華」のジェニファー・ジェイソン・リー、「シェフとギャルソン、リストランテの夜」で共同脚本・共同監督&主演をこなした才人スタンリー・トゥッチ、「エリザベス」のダニエル・クレイグ、2000人のオーディションで選ばれた新人タイラー・ホークリンと「グッドナイト・ムーン」の子役リーアム・エイケンが、ハンクスの息子役で出演。

時は旧30年代、大恐慌真っ只中のシカゴ。マイケル・サリヴァンはアイルランド系ギャングの殺し屋として働いていた。しかし、ギャングのボスの息子・コナーが話し合いの途中で相手を射殺、仕方なく手を貸したマイケルは、興味本位で父親の仕事を見ようとした長男に殺しの現場を見られてしまう。コナーは、父親とマイケルの親密さを苦々しく思っていたのもあり、口封じでサリヴァンともども殺すことを決意する。妻と次男の命を奪われたサリヴァンは、生き残った長男とともに復讐と救済を求めて旅立った。コナーの凶行を許し再出発するためにボスから和解金が提示される。だが、サリヴァンは受け取ろうとせずにメッセンジャーの頭を銃でぶち抜いた。シカゴのイタリア系マフィアを牛耳るフランク・ニッティを訪ねて支援を仰ぐが既に彼のもとにはボスの父子が来ていた。二人の息子の狭間でボスが選んだのはデキが悪くとも血の繋がったコナーだった。ニッティは殺し屋マグワイアをサリヴァンに差し向ける。

旧30年代という時代が舞台だが、「アメリカン・ビューティー」と同じく父親の苦悩を描いた作品。物語を占めているのは、ファミリーから追われる身となったサリヴァンと長男の生きる術を伝えるロードである。タイトルの“パーディション”とはサリヴァンと息子のマイケル・サリヴァン・ジュニアが目指す町の名であり、同時に“地獄”を碗曲的に意味する言葉でもある。ここで大きく係わって来る殺し屋マグワイアは、年をとった役だった為に、ジュード・ロウは髪は禿げ、顔色は不気味で歯はボロボロ、殺した死体の写真を撮るのが趣味と不気味キャラに扮している。おそらくこの作品もアカデミー賞に絡んでくるだろう。

オフィシャルサイト:http://www.foxjapan.com/movies/roadtoperdition/

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2002年10月7日 by p-movie.com