ブルーム・オブ・イエスタディ

ハクソー・リッジ


(C) 2016 Dor Film-West Produktionsgesellschaft mbH / FOUR MINUTES Filmproduktion GmbH / Dor Filmproduktion GmbH

時は、現代。ホロコースト研究所に勤めるトト(ラース・アイディンガー)は、ナチス親衛隊の大佐だった祖父を持ち、家族の罪に真剣に向き合うあまり心はいつも不安定。さらに、2年もかけて企画した“アウシュヴィッツ会議”のリーダーから、外されてしまう。最悪の精神状態で、フランスから来るインターンのザジ(アデル・エネル)を迎えに行く。到着した彼女は、トトの下で研修できることに感激したのも束の間、迎えの車がベンツだと知ると、激しく怒り出す。ユダヤ人の祖母が、ベンツのガス・トラックでナチスに殺されたというのだ。(実際はトトの言う、「本当はベンツではなく、オペル・ブリッツかマギルスである。」は正しい。オペルは約10年前まで国内販売もされていた乗用車メーカー、マギルスは消防車に特化したメーカーだが、両社は戦争中、共にナチスのために軍用トラックを多く生産していたのである。そしてそれはあらゆる用途に使われたのだ。)彼女はヒトラーの飼っていたシェパード(ドイツ犬だから)は安楽死させるべき。とも言い放つ。まさに、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」状態である。スタート地点は真逆だが、同じ目標のためにアウシュヴィッツ会議を企画することになった二人。トトはコロコロと気分が変わるザジに唖然とし、ホロコーストの被害者の孫なのに、何かと歴史を茶化す、ザジの破天荒なブラックユーモアにも我慢ならなかった。
ある日、会議を欠席すると言いだしたホロコーストの生還者で女優のルビンシュタインを説得する役目を担った二人。トトはここでも「あの悲劇を分かってない」と暴言を吐き、女優を怒らせてしまった。帰り道ヤケになってネオナチの屈強な男たちにケンカを売り、返り討ちにされたところをザジに助けられるトト。ザジの寝室で手当てを受けていたトトは、目を疑う“ある物”を見つける──。


(C) 2016 Dor Film-West Produktionsgesellschaft mbH / FOUR MINUTES Filmproduktion GmbH / Dor Filmproduktion GmbH

オープニングから畳みかけるようなユーモアと毒舌の連続に、ホロコーストというシリアスな題材で笑っていいのかと不安を覚えた私たちは、“ドイツ、ウィーン、ラトビア”へと過去を追いかける二人の旅に同行しながら気付いていく。すべての人間に、どんな傷でも癒せる、素晴らしい力があることに。困難な日々の中にも必ず美しい花のような瞬間があり、昨日咲いた花(ブルーム・オブ・イエスタディ)が、今日、そして明日を輝かせてくれる。監督はスマッシュヒットした『4分間のピアニスト』のクリス・クラウス。主人公と同じように、家族にダークな過去があると知り、大変なショックを受け、自らホロコーストの調査を重ねた。その際に、加害者と被害者の孫世代が、歴史をジョークにしながら楽しそうに話している姿に触れ、本作のアイデアが浮かんだという。当然ながら、彼らが親族の経歴を忘れたわけでも、そこから受けた心の痛みが消えたわけでもない。出演は『パーソナル・ショッパー』のラース・アイディンガーと、『午後8時の訪問者』のアデル・エネル。
ドイツでは、ホロコーストを題材にした映画は何本もつくられ、最終的には戦争自体の愚かさを訴えるというステレオタイプの作品に終始した。それでも、過去に囚われずに、希望と共に未来を生きようとする世代のために、新しいアプローチの映画を作ることを決意した監督。この切り替えによってドイツ国内で高く評価されるだけでなく、昨年の第29回東京国際映画祭においても、東京グランプリを獲得した。


(C) 2016 Dor Film-West Produktionsgesellschaft mbH / FOUR MINUTES Filmproduktion GmbH / Dor Filmproduktion GmbH

ナチス映画…ではない。と感じてしまうのも監督の目論見にはまってしまったからなのか?
ホロコーストという重いテーマ、2人は背景が敵同士という関係にありながら、互いに愛情が目覚めてくる。背景だけを取り除けば、まんまラブコメではないか!
ナチスを感じさせない、作品中にもそのようなことを思わせる場面も、描写もない。コミカル、ユーモア。それでいて2人の愛憎のたどたどしいぶつかりあいに、いったいラストはどうなっていくの? もどかしさをずっと感じながらも、ラスト…。切なさと明日への希望を感じさせるラストにほっとした。ナチス映画の歴史が変わるに違いない、エポック・メイキングな作品が完成した。

<CREDIT>

■出演者:ラース・アイディンガー、アデル・エネル、ヤン・ヨーゼフ・リーファース、ハンナ・ヘルツシュプルング
■監督:クリス・クラウス
■配給:キノフィルムズ・木下グループ
■2016年/ドイツ・オーストラリア/126分
■原題:『DIE BLUMEN VON GESTERN』

2017年9月30日(土)よりBunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー公開中

公式ホームページ
http://bloom-of-yesterday.com/

(C) 2016 Dor Film-West Produktionsgesellschaft mbH / FOUR MINUTES Filmproduktion GmbH / Dor Filmproduktion GmbH

【ライター】戸岐和宏

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カテゴリー: ヨーロッパ | 映画レビュー

2017年10月3日 by p-movie.com

ハクソー・リッジ

ハクソー・リッジ


(C)Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016

銃も手榴弾もナイフさえも、何ひとつ武器を持たずに第2次世界大戦・沖縄の激戦地(ハクソー・リッジ)を駆けまわり、たった1人で75人もの命を救った男がいた。彼の名は、デズモンド・ドス。重傷を負って倒れている日本兵に手当てを施したことさえある。終戦後、良心的兵役拒否者としては、アメリカ史上初めての名誉勲章が授与された。
なぜ、彼は武器を持つことを拒んだのか?なんのために、命を救い続けたのか? いったいどうやって、奇跡を成し遂げたのか?“命を奪う戦場で、命を救おうとした”1人の男の葛藤と強い信念を浮き彫りにしていく─実話から生まれた衝撃の物語。

〈ハクソー・リッジとは…〉
第2次世界大戦の激戦地・沖縄の前田高地のこと。多くの死者を出した壮絶な戦いの場として知られている。ハクソーとは弓鋸で、リッジとは崖の意味。150メートルの断崖絶壁の崖が、のこぎりのように険しくなっていたことから、最大の苦戦を強いられたアメリカ軍が、“ハクソー・リッジ”と呼んだ。

第2次世界大戦が日に日に激化し、デズモンドの弟も周りの友人たちも次々と出征する。そんな中、子供時代の苦い経験から、「汝、殺すことなかれ」という教えを大切にしてきたデズモンドは、「衛生兵であれば自分も国に尽くすことができる」と陸軍に志願する。グローヴァー大尉(サム・ワーシントン)の部隊に配属され、ジャクソン基地で上官のハウエル軍曹(ヴィンス・ヴォーン)から厳しい訓練を受けるデズモンド。体力には自信があり、戦場に見立てた泥道を這いずり回り、全速力で障害物によじ登るのは何の苦もなかった。だが、狙撃の訓練が始まった時、デズモンドは断固として銃に触れることを拒絶する。軍務には何の問題もなく「人を殺せないだけです」と主張するデズモンドは、「戦争は人を殺すことだ」と呆れるグローヴァー大尉から、命令に従えないのなら、除隊しろと宣告される。その日から、上官と兵士たちの嫌がらせが始まるが、デズモンドの決意は微塵も揺るがなかった。しかし、ついに命令拒否として軍法会議にかけられることになる。
「皆は殺すが、僕は助けたい」─軍法会議で堂々と宣言するデズモンド。ところが、意外な人物の尽力で、デズモンドの主張は認められ、武器を持たずに戦場に向かうことを許可される。
 1945年5月、沖縄。グローヴァー大尉に率いられて、「ハクソー・リッジ」に到着したデズモンドら兵士たち。先発部隊が6回登って6回撃退された末に壊滅した激戦地だ。150mの絶壁を登り、前進した瞬間、四方八方からの攻撃で、秒速で倒れていく兵士たち。ひるむことなく何度でも、戦場に散らばった命を拾い続けるデズモンド。しかし、武器を持たないデズモンドに、さらなる過酷な戦いが待ち受けていた…。


(C)Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016

幼少期に観たTV『コンバット』で、戦うことが目的の兵士の中に、“衛生兵“という戦わない兵士がいることを知った。役名はドク(2人いたが、有名なのはカーター)。彼は戦闘をせず、負傷した仲間に黙々と応急処置を施していた。なぜ撃たれてしまうかもしれないのに、銃弾の下をかいくぐり、ただ仲間を助けるだけしかしないのか? 当時の私たちにとっても、地味な役割のためか人気がなかった。やはり子供にとっては、人の命を救う崇高な使命なんて全然わからなかったのである。その衛生兵(カーター)でも護身用に拳銃は携行していたのだから、「敵を殺さなければ自分が殺される」という過酷な状況において武器を持たずに従軍するには、個人にとっても強靭な精神力が必要だったし、部隊の仲間にとっては、命を預けられない厄介な忌むべき存在であったに違いない。それが隊内のイジメの対象となったことも当然だと思う。

それでも、それでもだ。「皆は殺すが、僕は助けたい」と軍法会議で宣言するデズモンド。「信念を曲げたら生きていけない!」それが信仰心というものなのか?かくも強靱なものなのか?どこまで信念を貫けるものなのか? 信仰心の薄い私などはただただ驚嘆であった。信仰心といえば、奇しくもアンドリュー・ガーフィールドは本作と、先に公開された『沈黙 -サイレンス-』の中でも信仰心について言及している。舞台は同じ日本。ただしこちらはハッピーエンドではない重いテーマだったが…。


(C)Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016

さて、本作では3つの世界が舞台として描かれる。デズモンドの命に対する確固たる信念が培われた少年期、兵舎、そして狂気に満ちたハクソー・リッジである。デズモンドの信念がいかに強靭なものであったかを描くためにも、その対比としてメル・ギブソン監督は、戦場が悲惨極まりなかったことを描く必要があった。
映画の戦闘シーンは『プライベート・ライアン』以降、年々、超リアルに描かれるようになってきた。すでに独立戦争やベトナム戦争の戦闘シーンを描いてきたギブソンだが、今回初めて第2次世界大戦を描くことになった。ギブソン流アプローチは、とにかくできるだけ現実に近付ける、なるべくCGを使わずに、カメラでの撮影の効果を最大限に利用する、“全てを実際に行う”というもの。結果、『ハクソー・リッジ』はリアル感においては、自分が実際にその世界にいるかのように感じられ、悲惨さにおいて今までのどの作品よりも群を抜いており残酷極まるものとなった。私は、日本兵よりも、感情移入は完全に米軍になってしまうという、複雑な気持ちになってしまったが、ことさらに日本兵の狡猾さ、残酷さを強調するような描き方はされていない。とかく残酷な戦場描写が話題になりそうな本作だが、第89回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など6部門でノミネートされ、編集賞と録音賞の2部門を受賞。単純な戦争アクションではなく、信仰心の力をテーマにした強烈な作品である。

<CREDIT>

■出演者:アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、テリーサ・パーマー、ヴィンス・ヴォーン、ヒューゴ・ウィーヴィング
■監督:メル・ギブソン
■配給:キノフィルムズ
■2016年/アメリカ・オーストラリア/139分
■原題:『Hacksaw Ridge』

2017年6月24日(土)全国ロードショー

公式ホームページ
http://hacksawridge.jp/

(C)Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016

【ライター】戸岐和宏

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2017年6月19日 by p-movie.com

マリアンヌ

マリアンヌ
(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved

1942年、イギリスの特殊作戦執行部(SOE)の緊急任務のため、諜報員マックス・ヴェイタン(ブラッド・ピット)はドイツ占領下のカサブランカにパラシュートで降り立つ。そこで、彼は魅力的なフランス軍レジスタンスの女性マリアンヌ(マリオン・コティヤール)と出会う。決して交わることのない人生を歩んでいた2人を、ある重大なミッションが引き合わせる。それは、夫婦を装い、滞在中のドイツ軍大使を暗殺するというもの。彼はミッションを遂行する上で、ただ一つの信条を持っていた。それはパートナーと決して恋に落ちないこと。だがミッションを成し遂げるとともに、真面目で孤独な男だったマックスの抑えきれない感情が、初めて声になる。「一緒にロンドンへ行こう、結婚してほしい」
数週間後、ロンドンの街角にある小さなカフェでささやかな結婚式を挙げる。マックスの信頼する上司フランク(ジャレッド・ハリス)たちの前で愛を確かめあう2人。やがて最愛の娘も生まれ、初めて送る幸せな生活を噛みしめて過ごしていた矢先、彼は諜報部から信じられない話を聞かされる。

「マリアンヌには、二重スパイの疑いがある」 「疑惑は72時間以内に判明する。二重スパイであれば、君自身の手で終わらせなければならない。」

マックスの目に映る日常が一変し、マリアンヌの些細な行動でさえ全て疑わしく思えた。だが唯一変わらないもの、それは彼女への愛おしさだった。マックスは彼女の疑惑が偽りであることを証明するために奔走する。果たしてマリアンヌの正体とは? そして2人が導き出した選択は?


(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved

監督は『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)、『キャスト・アウェイ』(00)、『ザ・ウォーク』(15)など数々の革新的な作品を手がけてアカデミー賞受賞経験を持つロバート・ゼメキス。脚本を読むとすぐに、ゼメキスには映画のスタイルに対する確固たるビジョンが見えたという。第二次世界大戦の荒廃を描くだけでなく、生の奇跡に陶酔した人びとの熱気や活気に満ちた生活。緊迫しながらもまぶしく華やかな占領下のカサブランカを、何もなく風の強いモロッコの砂漠の美しさを、ベーカー・ストリートにある特殊作戦執行部オフィスの陰のさす廊下を、連合軍が攻撃に失敗し、ナチスに支配されレジスタンスが抵抗しているフランスのデュエップの危険な状況を、空襲で荒廃しながらも屈しないロンドンを、21世紀スタイルの活気を持って再創造した。 
また、ゼメキスは映画の主観的な視点を途中でマックスからマリアンヌに切り替え、語りや全体的なビジュアルの雰囲気も合わせて切り替えることを考えていた。映画の前半は砂丘や屋上といった広く開放的な風景に満ちており、後半は世界がマックスとマリアンヌを追い込んでいくに合わせて、狭苦しい部屋や、尋問をするオフィスや、フランスの刑務所や、窮屈なコックピットなど、より狭い場所で展開される。視覚表現にこだわる彼の面目躍如といったところだ。

ところで、ブラッド・ピットの前作『フューリー』(14)では稼動可能なティーガー戦車が登場し話題となったが、本作『マリアンヌ』でも話題となっているのが、マックスが操縦するこれまた希少な航空機ウェストランド・ライサンダーだ。マリアンヌがスパイでないことを証明する個人的なミッションに臨む彼は、これに乗ってフランスのディエップへと向かう。イギリス空軍が第二次世界大戦中に使用したこの航空機は、本作で描かれるように短距離離着陸性能を生かして、人里離れた場所に着陸する(秘密連絡員輸送のため)にはうってつけだった。では今回も本物か?残念ながら、本作に使用された航空機は、当時のものとスペックまで合わせて作られたレプリカである。


(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved

『マリアンヌ』は入り組んだスパイスリラーでもあり、心奪われる戦争ドラマでもあるが、本質は混乱と国際関係の瀬戸際に放り出されたマックスとマリアンヌの疑念、危機、無償の愛を描いた情熱的なラブストーリーである。この2人の諜報員は、運命的なロマンスの相手か、宿命の敵か、あるいはその両方なのか? カサブランカ、空襲下のロンドン、そしてドイツ支配下のフランスに至るまで、豪華で視覚性に富んだ舞台の中で、ゼメキスはハリウッド黄金期に隆盛したような壮大な物語―ミステリーと、スリルと、愛に満ちた物語―を生み出しながら、観る者を引きつける豊かな力を駆使して本作を仕上げた。すべては胸が張り裂けるような選択へとつながっていくものの、未来への希望の一歩も踏み出される。私たちは、身を乗り出し、必ずや心を揺さぶられるだろう。

<CREDIT>

■出演者:ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール、ジャレッド・ハリス
■監督:ロバート・ゼメキス
■配給:東和ピクチャーズ
■2016年/アメリカ/124分
■原題:『ALLIED』

2017年2月10日(金)TOHOシネマズ六本木ヒルズ 他 全国公開

公式ホームページ
http://marianne-movie.jp/

(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

【ライター】戸岐和宏

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2017年2月9日 by p-movie.com

スター・トレックBEYOND

スタートレック
ⓒ2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved. STAR TREK and related marks are trademarks of CBS Studios Inc.

宇宙の最果てにある未知の領域への5年間の探査任務に就いてから3年目―。宇宙基地・ヨークタウンから、未知の星に不時着した探査船を救出する任務に出発したカーク船長(クリス・パイン)率いるエンタープライズ号(NCC-1701)に突然、謎の異星人・クラール(イドリス・エルバ)に率いられた無数の攻撃機が襲いかかる。激しく応戦するも彼らの容赦のない攻撃に、遂にエンタープライズ号は大破し、制御不能に陥る。カークとクルーたちは、脱出ポッドで船を離れ、エンタープライズ号が墜落していく姿を目にしながら、見知らぬ惑星に不時着する。カークは、離れ離れになったクル―とエンタープライズ号の捜索を開始する中で、ジェイラ(ソフィア・ブテラ)という謎の女性戦士と出会う。そして、ある場所に案内される。そこにあったのは、およそ100年前に消息を絶った艦隊の英雄・エディソンが乗船していたフランクリン号(NX-326)だった。そこに残されていたものとは…。

一方、クラールは、手薄になった宇宙基地・ヨークタウンへの攻撃を開始する。カークは、クルーたちを救い出し、生還できるのか!? 最果ての宇宙で、限界を超えた壮絶な戦いが始まる―


ⓒ2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved. STAR TREK and related marks are trademarks of CBS Studios Inc.

誰もが知る人気コンテンツを、壮大なスペクタクルとドラマティックなストーリーによって全く新しいSFアクション超大作シリーズに創り上げた、ハリウッドのみならずいま世界が最も注目するヒット・メーカー、J・J・エイブラムス。彼が監督を務めたシリーズ前2作は、全世界において約8億5,300万ドルを稼ぎ出す大ヒットを記録。

その大ヒットシリーズの最新作『スター・トレック BEYOND』は、J・J・エイブラムスがプロデューサーを務め、監督には常識を覆す卓越したアクションで全世界を熱狂させた『ワイルド・スピード』シリーズのジャスティン・リンを抜擢、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』、『ワイルド・スピード』シリーズの2大トップフィルムメーカーの最強コラボレーションが最新作で実現することになった。脚本は前作に引き続き、スコッティ役として本作にも登場するサイモン・ペッグと共にダグ・ユングが務める。またキャストでは、クリス・パイン、ザッカリー・クイント、ゾーイ・サルダナ、カール・アーバン、ジョン・チョウ、アントン・イェルチンらお馴染みのメンバーの他に、イドリス・エルバ、ソフィア・ブテラ、ジョー・タスリムといった新キャストも加わり、スター・トレックの世界をより魅力的なものにしている。


ⓒ2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved. STAR TREK and related marks are trademarks of CBS Studios Inc.

『スター・ウォーズ』、『スター・トレック』このSF映画2トップを知らないアメリカ人はいない。『スター・トレック』は1966年から始まったTVドラマシリーズ。5シリーズ(全話703話にもなる大河ドラマ!!)、劇場用映画は本作を含めて13本もある。惑星間の和平を目指す、宇宙探査船エンタープライズ号の乗組員たちの冒険を描いたものだが、人種差別の激しかった当時のアメリカ、冷戦中という時代背景にもかかわらず、あらゆる人種を乗せた差別のなくなった時代の船という画期的な設定、物語の高尚な設定が単なる宇宙活劇とは違い、トレッキー、トレッキアンのようなファンを生み出していった。

ちなみに『スター・ウォーズ』のファンはスターウォーズマニアと呼ばれているらしいが、ファン心理はそれぞれ一線を画しているようだ。日本での人気はどうか?うーん圧倒的に『スター・ウォーズ』に軍配が上がるだろう。どうも日本人にとっては政治的臭いのするドラマは苦手なようだ。わかりやすい単純なアクションものの方が受けはいいようである。といってもやはり、J・J・エイブラムスによる監督、製作の2009年からリブートされた新3作は前の10作に比べてよりアクションが強調されており、より『スター・ウォーズ』的になってきたようだ。つまり裾野が広がり、誰でも入門しやすい作品になってきた。

エンタープライズ号と無数の敵攻撃機の戦闘、宇宙基地・ヨークタウンでの攻防戦はかつてないスピード感あふれる映像と、リアルな超絶アクションで描かれる。また、不時着したカークたちの前に現れる100年前の旧型船は、TVドラマ『エンタープライズ』(カーク船長の時代の約100年前を描いた)の宇宙探査船エンタープライズ号(NX級といわれるNX-01)の同型船フランクリン号(NX-326)、そこに残されていた、クラールの謎を解く旧地球連合宇宙艦隊時代の映像、最後にドックで建設中の船が、NCCエンタープライズ1701Aとなっていることなどに、トレッキーはニャリとしてしまうに違いない。最新作『スター・トレック BEYOND』は、エンタープライズ号のクルーが宇宙の最果てにある未知の領域を探索し、そこで彼らや惑星連邦の存在意義の真価を問う新たな謎の敵と遭遇する物語だが、本作は、シリーズ誕生50周年にふさわしい最高のアクション超大作となっている。ぜひ劇場で楽しんでほしい。

<CREDIT>

■出演者:クリス・パイン、ザッカリー・クイント、カール・アーバン、ゾーイ・サルダナ、
サイモン・ペッグ、ジョン・チョウ、アントン・イェルチン、イドリス・エルバ、ソフィア・ブテラ
■共同脚本:サイモン・ペッグ & ダグ・ユング
■監督:ジャスティン・リン
■配給:東和ピクチャーズ
■2016年/アメリカ/123分
■原題:『STARTREK BEYOND』

2016年10月21日(金)
全国順次ロードショー

公式ホームページ
http://startrek-movie.jp/

ⓒ2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
STAR TREK and related marks are trademarks of CBS Studios Inc.

【ライター】戸岐和宏

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カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2016年10月17日 by p-movie.com

帰ってきたヒトラー

帰ってきたヒトラー
ⓒ2015 MYTHOS FILMPRODUKTION GMBH & CO. KG CONSTANTIN FILM PRODUKTION GMBH

総統が帰ってきた。時は現在、季節は夏。アドルフ・ヒトラー(オリヴァー・マスッチ)が突然総統官邸の地下壕の部屋(現在は庭)で目覚める。彼が死んだと思われてから70年が経ち、そこは今ではベルリンの住宅街になっている。戦争は終わり、ナチ党は存在せず、彼を元気づけた愛するエヴァ・ブラウンももういない。現在のドイツ社会はあまりにも多文化的で、彼にはさっぱり理解できない。彼はリストラされたテレビマン(ファビアン・ブッシュ)によって見出され、テレビに出演することになる。だが、予想に反して、アドルフ・ヒトラーはTV界で新しいキャリアをスタートさせることになった。あろうことか、本物であるにもかかわらず、ヒトラーを模した才能溢れるコメディアンと間違われてしまったからだ。彼は、徐々に人気を博していく。人々は彼をコメディアンだと思い、彼は自分の理想を広げるためにメディアの力を利用する。しかも、彼の目的は昔と少しも変わってはいなかった…。

2012年、ベストセラー『帰ってきたヒトラー』で、ティムール・ヴェルメシュは、“もしヒトラーが戻ってきたら、どうなるだろう?”という物議を醸す問題を提起し、世界中に旋風を巻き起こした。この小説は20週にわたって「デア・シュピーゲル」誌のベストセラーリストで1位の座を獲得した。

本作はフィクションにドキュメンタリーを融合させ映画化された。ドキュメンタリー形式で撮影されたシーンでは、ヒトラーに扮したマスッチが、ベルリンやミュンヘンといった大都市だけでなく、ドイツ中、街角のごく普通の人たちや、アニマルブリーダーや、企業家や、有名人や、若い政治家や、ジャーナリストや、ヒップスターカルチャーを擁護するネオナチの若者たちと顔を合わせ、会話する。デヴィッド・ヴェンド監督は説明する。「俳優たちと作る人工的なシチュエーション(フィクション)の中でヒトラーを描くだけでなく、現実の人々の中に彼を解き放つのは、エキサイティングだと思った」と。「それが、“現代にヒトラーが戻ってきたらどんなことが起こるのか?彼には本当にチャンスがあるのか?”という疑問に対して信頼できる答えを得られる唯一の方法だった」

ヴェンド監督と主演俳優は、普通の人々のリアクションに驚いたという。「多くの人々がヒトラーを見て嬉しそうだった」「まるでポップスターと遭遇したような感じだった。彼らはこれが本物のヒトラーであるはずがないとわかっていたけれど、彼らはヒトラーを受け入れ、彼に心を開いたのだ」「多くの人が偽のヒトラーを歓迎し、彼と一緒に携帯で自撮りをしたがった。彼らは民主主義に毒づき、誰かがもう一度ドイツで思い切った手段を取ってくれることを望んでいた」彼は多くの市民が右翼的な考え方を自由に表現したことに驚いた。「あれほど多くの人々が公然と外国人に反対し、民主主義に対して激しい怒りを露わにするとは思ってもいなかった。」

ⓒ2015 MYTHOS FILMPRODUKTION GMBH & CO. KG CONSTANTIN FILM PRODUKTION GMBH

実際、ヒトラー生存説、目撃説は枚挙に遑がない。ここで少し列記してみる。

1945年4月30日にヒトラーが自殺。
1945年5月、ソビエト連邦秘密諜報部の特殊部隊がヒトラーとブラウンの遺骸(下顎骨の1部と歯のブリッジ2つ)を見つけ、身元確認したにもかかわらず、ソ連はヒトラーの自殺を長い間隠していた。それもまた混乱を引き起こした。

1945年9月21日、FBIロサンゼルスオフィスは、“ヒトラーと50名の腹心が、ベルリン陥落からおよそ10日後、2隻の潜水艦に乗り、アルゼンチン南部に上陸した。ヒトラーは牧場に隠れている。特徴のある髭は剃り、喘息と潰瘍に苦しんでいる。”という文章を受け取っている。

1956年10月25日になって初めて、アドルフ・ヒトラーは正式に死亡宣告された。それまでに、ヒトラーの家臣ハインツ・リンゲや、ヒトラーの副官オットー・ギュンシェのような懐刀を含め、40名以上の目撃者が宣誓のもとに尋問された。彼らは、アドルフ・ヒトラーとエヴァ・ブラウンの死体を見て、その死体が焼かれるのを目撃したと語った。だが、リンゲもギュンシェもソ連の捕虜収容所から戻ってくる1950年代半ばまで、証言することができなかったのである。

数年前に出版されたばかりのFBIのファイルに、第二次世界大戦後、デンマークやチベットでヒトラーを見たという目撃証言を見ることができる。これと並行して、ヒトラーと多くのナチス党員がドイツ国防軍の一部とともに南極大陸に逃亡したという説もあった。

これまで映画業界は、ナチスを題材に奇想天外な作品を数多く製作してきた。「ヒトラーがタイムスリップ、しかも人々にコメディアンとして受けいれられる」なんて、今回は本作をコメディだと思う方も多いだろう。だが実はそうではない。ヒトラーは自分の理想を広げるためにメディアの力を利用し、しかも彼の目的は昔となんら変わってないのである。奇しくもTV出演時のスタジオの照明の暗さ、短く歯切れのいい演説、次第に激高してゆく様は、まさに70年前、彼がやっていた演説テクニックそのものである。人々はその過激さに新鮮さを覚えるとともに、度肝を抜かれる。そしてヒトラー熱は流行していくのだが、これとてかつてドイツ国民が陥った過程をそのものである。本作は単なるコメディではない。観終わって、あれほどの悲惨な戦争をも忘れかけている現在の世界の危なさ、そしていとも簡単に民衆の考えが変えられていく怖さを感じるだろう。しかもナチスが政権を取った時のように合法的に…。

ⓒ2015 MYTHOS FILMPRODUKTION GMBH & CO. KG CONSTANTIN FILM PRODUKTION GMBH

<CREDIT>

■出演者:オリヴァー・マスッチ、ファビアン・ブッシュ、クリストフ・マリア・ヘルプスト、
カッチャ・リーマン、フランツィスカ・ウルフ
■原作:ティムール・ヴェルメシュ
■監督:デヴィッド・ヴェンド
■配給:ギャガ
■2015年/ドイツ/116分
■原題:『ER IST WIEDER DA』

6月17日(金)TOHOシネマズ シャンテ他
全国順次ロードショー

公式ホームページ
http://gaga.ne.jp/hitlerisback/

ⓒ2015 MYTHOS FILMPRODUKTION GMBH & CO. KG CONSTANTIN FILM PRODUKTION GMBH

【ライター】戸岐和宏

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2016年6月13日 by p-movie.com