マリアンヌ

マリアンヌ
(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved

1942年、イギリスの特殊作戦執行部(SOE)の緊急任務のため、諜報員マックス・ヴェイタン(ブラッド・ピット)はドイツ占領下のカサブランカにパラシュートで降り立つ。そこで、彼は魅力的なフランス軍レジスタンスの女性マリアンヌ(マリオン・コティヤール)と出会う。決して交わることのない人生を歩んでいた2人を、ある重大なミッションが引き合わせる。それは、夫婦を装い、滞在中のドイツ軍大使を暗殺するというもの。彼はミッションを遂行する上で、ただ一つの信条を持っていた。それはパートナーと決して恋に落ちないこと。だがミッションを成し遂げるとともに、真面目で孤独な男だったマックスの抑えきれない感情が、初めて声になる。「一緒にロンドンへ行こう、結婚してほしい」
数週間後、ロンドンの街角にある小さなカフェでささやかな結婚式を挙げる。マックスの信頼する上司フランク(ジャレッド・ハリス)たちの前で愛を確かめあう2人。やがて最愛の娘も生まれ、初めて送る幸せな生活を噛みしめて過ごしていた矢先、彼は諜報部から信じられない話を聞かされる。

「マリアンヌには、二重スパイの疑いがある」 「疑惑は72時間以内に判明する。二重スパイであれば、君自身の手で終わらせなければならない。」

マックスの目に映る日常が一変し、マリアンヌの些細な行動でさえ全て疑わしく思えた。だが唯一変わらないもの、それは彼女への愛おしさだった。マックスは彼女の疑惑が偽りであることを証明するために奔走する。果たしてマリアンヌの正体とは? そして2人が導き出した選択は?


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監督は『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)、『キャスト・アウェイ』(00)、『ザ・ウォーク』(15)など数々の革新的な作品を手がけてアカデミー賞受賞経験を持つロバート・ゼメキス。脚本を読むとすぐに、ゼメキスには映画のスタイルに対する確固たるビジョンが見えたという。第二次世界大戦の荒廃を描くだけでなく、生の奇跡に陶酔した人びとの熱気や活気に満ちた生活。緊迫しながらもまぶしく華やかな占領下のカサブランカを、何もなく風の強いモロッコの砂漠の美しさを、ベーカー・ストリートにある特殊作戦執行部オフィスの陰のさす廊下を、連合軍が攻撃に失敗し、ナチスに支配されレジスタンスが抵抗しているフランスのデュエップの危険な状況を、空襲で荒廃しながらも屈しないロンドンを、21世紀スタイルの活気を持って再創造した。 
また、ゼメキスは映画の主観的な視点を途中でマックスからマリアンヌに切り替え、語りや全体的なビジュアルの雰囲気も合わせて切り替えることを考えていた。映画の前半は砂丘や屋上といった広く開放的な風景に満ちており、後半は世界がマックスとマリアンヌを追い込んでいくに合わせて、狭苦しい部屋や、尋問をするオフィスや、フランスの刑務所や、窮屈なコックピットなど、より狭い場所で展開される。視覚表現にこだわる彼の面目躍如といったところだ。

ところで、ブラッド・ピットの前作『フューリー』(14)では稼動可能なティーガー戦車が登場し話題となったが、本作『マリアンヌ』でも話題となっているのが、マックスが操縦するこれまた希少な航空機ウェストランド・ライサンダーだ。マリアンヌがスパイでないことを証明する個人的なミッションに臨む彼は、これに乗ってフランスのディエップへと向かう。イギリス空軍が第二次世界大戦中に使用したこの航空機は、本作で描かれるように短距離離着陸性能を生かして、人里離れた場所に着陸する(秘密連絡員輸送のため)にはうってつけだった。では今回も本物か?残念ながら、本作に使用された航空機は、当時のものとスペックまで合わせて作られたレプリカである。


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『マリアンヌ』は入り組んだスパイスリラーでもあり、心奪われる戦争ドラマでもあるが、本質は混乱と国際関係の瀬戸際に放り出されたマックスとマリアンヌの疑念、危機、無償の愛を描いた情熱的なラブストーリーである。この2人の諜報員は、運命的なロマンスの相手か、宿命の敵か、あるいはその両方なのか? カサブランカ、空襲下のロンドン、そしてドイツ支配下のフランスに至るまで、豪華で視覚性に富んだ舞台の中で、ゼメキスはハリウッド黄金期に隆盛したような壮大な物語―ミステリーと、スリルと、愛に満ちた物語―を生み出しながら、観る者を引きつける豊かな力を駆使して本作を仕上げた。すべては胸が張り裂けるような選択へとつながっていくものの、未来への希望の一歩も踏み出される。私たちは、身を乗り出し、必ずや心を揺さぶられるだろう。

<CREDIT>

■出演者:ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール、ジャレッド・ハリス
■監督:ロバート・ゼメキス
■配給:東和ピクチャーズ
■2016年/アメリカ/124分
■原題:『ALLIED』

2017年2月10日(金)TOHOシネマズ六本木ヒルズ 他 全国公開

公式ホームページ
http://marianne-movie.jp/

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【ライター】戸岐和宏


カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2017年2月9日 by p-movie.com