愛されるために、ここにいる

変わらない毎日から一歩踏み出すチャンス! ★★★

[原題] Je ne suis pas la pour etre aime
[05/仏] 1h33 12月16日 東京ユーロスペースにてロードショー!
[監督] ステファヌ・ブリゼ
[製作] ミレナ・ポワヨ、ジル・サクト
[脚本] ジュリエット・セイルズ、ステファヌ・ブリゼ
[撮影] クロード・ガルニエ
[音楽] クリストフ・H・ミュラー、エドゥアルド・マカロフ
[美術] ヴァレリー・サダジアン
[衣装] アン・ダンスフォード
[出演] パトリック・シェネ、アンヌ・コンシニ、ジョルジュ・ウィルソン、リオネル・アベランスキ、シリル・クトン、アンヌ・ブノワ、オリヴィエ・クラヴリ
[配給] セテラ・インターナショナル
[宣伝] セテラ・インターナショナル
オフィシャルサイト:http://www.cetera.co.jp/tango/index.html
(C)TS Productions

 2006年セザール賞3部門(主演男優賞・主演女優賞・助演男優賞)にてノミネートされた本作。一見、ダンスを通して初老の男性の生き甲斐になるかと思われがちなイメージが先行するが、あくまでもダンスがキッカケとして人生を見つめなおそうとする男の物語である。

 ジャン=クロードは父から引き継いだ執行官の仕事をこなす50歳を過ぎた男である。
裁判所命令に従い、家賃滞納をしている人へ強制退去の執行を行う役目だ。
あまり人に歓迎されるような仕事では無い為、彼自身が疲れ果てている。
更に毎週末には老人ホームに居る父親に面会し小言を聞かされながらも文句ひとつ言わずに帰る。
別れた妻との間に出来た息子に今の仕事を引き継がせようと思っているのだが、息子なのにまともに会話することも出来ずにいる。
そんな日々の中、事務所から見えるタンゴ教室の風景。習ってみたいと思ったジャン=クロードは思い切ってタンゴ教室に通い始める。
そこで出逢う若い女性、フランソワーズ。彼女はジャン=クロードを一目見て、古い知人だと解かり話しかけ、打ち解けていく。
久しぶりに女性とのタンゴを踊るジャン=クロードの心は自然と明るくなり恋にも似た感情が芽生える。
だがフランソワーズは数週間後に結婚する予定なのだ。フランソワーズは結婚までもうすぐ、という時期に婚約者の態度に不安感を抱えていた。
こんな状態を抱えている二人の人生が交差しはじめる…。

 孤独な50代のオジサンが自分の人生を振り返った時、既に取り戻せない過去だと諦め、仕方なく毎日を過ごす。
別れた妻との間に出来た息子にさえ、父親としてぎこちない会話しか出来ず、老人ホームにいる高齢の父親とも実際のところ会話が交わらない。
人間関係に幻滅し続けて生きている救いの無いオジサンにしか見えない。だが、一歩踏み出すきっかけとなるのがタンゴ教室である。
男女が向かい合い相手の身になって踊る練習を続ける主人公。彼は、このタンゴによって自分自身と向き合い、他人とも向き合うキッカケとなったのだろう。
人生をもう一度生きる為に歩き出す彼の今後に希望と明るさを予感させてくれる優しい仕上がりになっている。
(佐藤まゆみ)


カテゴリー: ヨーロッパ | 映画レビュー

2006年12月19日 by p-movie.com