2010 | Perfect Movie Guide

『漫才ギャング』完成報告記者会見 at ルミネtheよしもと

初監督作『ドロップ』が大ヒットを記録し、一気に邦画界の未来を背負う存在に躍り出た品川ヒロシが、再び自身の原作、脚本・監督作を引っ提げて帰ってきた。―それが『漫才ギャング』。

Superfly書き下ろしの主題歌「Beep!!」が疾走感を倍増させる中、今回の品川が描くのは、まさに彼自身が本職とする「漫才」の世界。それも留置所で出逢った見た目も性格もまったく違うふたりが、いつしか意気投合して漫才コンビを結成するという破格を極めるストーリーだ。

果たして今回はどのような作品に仕上がっているのか?すでに初号試写を観た関係者からは「前作越え」の評価も漏れ聞こえてくる本作だが、まだマスコミ披露も行われていない現時点で、出来あがったばかりの達成感や意気込みを語るべく、急遽、完成報告記者会見が行われた。それも、あの笑いの聖地「ルミネtheよしもと」で!

その時、12月22日午前10時。

「ルミネtheよしもと」の客席に集いしマスコミ陣は、幕が閉まった状態から突如、関西お笑いコンビ「ミサイルマン」による前座の猛襲を浴びることとなる。

普段この劇場に通い慣れたお客さんと違い、マスコミ記者は感情表現がかなり奥手だ。ミサイルマンのふたりもこの“アウェイ感”から生じるプレッシャーはハンパじゃなかったはず。それでもふたりは駆け抜けた。『漫才ギャング』に出演もしているおデブな西代洋は、腹にくくりつけたD&G(ドルチェ・アンド・ガッパーナ)のベルトを「3、2、1」の合図で腹の肉の下に忽然と消し去り、拍手喝さいを浴びた。まるで魔法だ。筆者も幾度も目をこすり、これが現実か否かを見極めようとした。現実だった。

いよいよ幕が開く。今度は司会進行としてお笑コンビ「ピース」の綾部祐二が登場。数日後には「M-1グランプリ」の決勝を控えている彼がここでこんなことをしていていいのか?誰もがそう気をそぞろにさせる中、彼は持ち前の安定感で徐々にマスコミを自分のペースへと引き込んでいく。ちなみに彼は本作『漫才ギャング』にも出演を果たしているそうだ。

そしていよいよ本日のメインが始動する。長編第二作目を完成させたばかりの品川ヒロシ監督、そして主演の佐藤隆太&上地雄輔の登場。

会見では『ROOKIES-卒業-』をはじめテレビ&邦画界の起爆剤として爽やかな熱血ぶりを振りまき続ける佐藤隆太が、この『漫才ギャング』のオファーを受けた経緯について振り返った。

「生意気にも非常に運命的なものを感じてます。というのも、たまたま僕自身がテレビで『品川監督の映画第2弾の製作が決まりました!タイトルは『漫才ギャング』です!』という報道を観てたんです。

それで内容も知らないのに、ああ、主人公の年齢はいくつくらいなんだろうな、って漠然とイメージを膨らませて、『ああ、やりたいな!』って思ったんです。でもキャストはとっくに決まっているんだろうな、とも思ってて。

ところが、数日してマネージャーから『映画の話が来てるんだけど』と打ち明けられた。『えっ!もしかして“あの”映画!?』って身体に衝撃が走りました」

そうやって運命的な映画に引き寄せられた佐藤は、初体験となった品川組の撮影現場についてこう語る。

「現場に入ってからの品川監督は本当に想像以上にポジティブで、すごく温かった。なにしろ初めてのタイプの役なので僕自身も多少不安はあったんですが、常に『だいじょうぶ!』って背中を押してくれる。そして『カット!』『OK!』の掛け方が実に気持ちいいんです。この人だったら何処へでもついていきたいなと思える監督でした!」

佐藤の爽やかな発言を受けて、司会の綾部が手際よくテキトーにまとめる。

「なるほど、本当に運命的なものだったんですね~」

間髪いれず、品川がツッコむ。

「(まとめ方が)古いよ!」

「古いってなんなんすか!(綾部)」

「昭和の歌謡祭みたいな・・・(品川)」

(一同爆笑)

今度は上地の出番だ。『漫才ギャング』ではドレッドヘアにタトゥーまで施した奇抜なキャラクターに挑む彼は、すでに品川とも「ヘキサゴン・ファミリー」としても気心知れた仲だ。彼は現場の印象をこう語る。

「監督自身がいい空気を出してくれるので、いつも現場も明るくて新鮮で、出演者とスタッフの距離も近くて、それでも決して慣れ合いにならず、いい意味でビリビリした現場でした…あっ、すみません、ちょっとケイタイが…あ、母さん?」

「出んのかよっ!?(綾部)」

「いま、ちょっと会見中だから…うん、じゃ、また!

…こういうときもある現場で…」

「どういうときだよ!(綾部)」

「こんな緊張感もありつつ(笑)、僕が言うのも何なんですが、品川監督の可能性は無限大だと思うので…また出てあげてもいいかな、と」

(一同爆笑)

まさに舞台上でボケとツッコミが反射光のようにキラキラ飛び交う会見。俄かに品川ヒロシが映画監督ならではの視座でふたりの印象を語る。

「今回はなにしろ漫才師の役ですから、『誰が演じるか?』という部分を占める割合が大きかった。雄輔とは前から親交があって、いつか自分の長編作品に出てほしいっていう想いはあったんですが、隆太くんとは逢ったこともなくて。でも彼の名前が浮かんだ瞬間から、どんどんこの企画のイメージが現実化していくのを感じました」

続けて品川は、佐藤との記念すべき初対面の一幕についてこう触れる。

「食事の席で初めてお逢いしたんですが、まだ映画の台本を渡しただけなのに、いきなり隆太くんが『今から公園に行ってきます!公園でマネージャーとネタ合わせしてきますから!いま、そういう気分なんです!』って言い出したんです。その真面目さというか、役者魂の凄まじさに心から胸打たれると同時に、この人、バカなんじゃないかな?って(笑)」

また上地についてはこのように振り返った。

「今回アクションが大変で本当に最後まで頑張ってくれました。語るべきエピソードは何もないですが…やっぱり彼もバカです(笑)。」

一転してちょっと真剣な顔で、品川がまとめる。

「いやでも、本当にふたりが真面目に役に向かっていく過程には感動させられました。ネタあわせを経て、漫才がみっちり仕上がっていく過程やその最終的な完成度についても、ほんとうに自分たち(品川庄司)の初舞台からは想像もつかないくらいのものだった。ほんとうに最高のキャストだなと想いました!」

最大級の賛辞に、役者ふたりは照れくさそうに頬笑みを浮かべる。凄くいい雰囲気が舞台から滲みでてくる。3人の信頼性やコンビネーションがよく伺えた瞬間だった。


ちなみに、本作のクライマックスでは主演の二人が満員の客席の前でガチの漫才を披露するとか。しかもお客さんにも「笑いたいところで笑ってください」とお願いし、まさに仕込みなしの真剣勝負に仕上がっているというのだ。

果たしてこの結果、どんな映像がスクリーンに刻まれているのか?

アクションからドラマから漫才まであらゆるところに本気印が宿った『漫才ギャング』の真価を心から期待したい。

『漫才ギャング』
配給:角川映画
(C)2011「漫才ギャング」製作委員会

公式サイト  http://www.manzaigang.jp/
2011年3月19日(土)全国ロードショー!

【ライター】牛津厚信

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カテゴリー: 特 集 | 記者会見

2010年12月24日 by p-movie.com

トロン:レガシー

20年前に失踪した父を探して、
美しく危険なコンピューターの世界へ―。

まず現状として『トロン』を知らない人が圧倒的に多すぎる。なので「レガシー(遺産、受け継がれたもの)」と銘打ったところで「何が?何を?」というところから始めなければならない。が、実際のところ1982年製作の前作の知識など、ほとんど必要ない。これは3D博覧会のパビリオンみたいなもの。2010年は3D元年と呼ばれたが、『アバター』の約1年後、それを締めくくるのにふさわしい独創的な3D世界がディズニー・ブランドよりお目見えしたというわけだ。

それはまさに暗闇に蛍光グリットの線がひた走る、壮大なエレクトリカル・パレードだった。

かつて大量のアーケード・ゲームとその愛好者たちで賑わっていたゲームセンター周辺は、20年後の現代、すっかりゴーストタウンと化していた。失踪した父の痕跡を求めてそこへ足を踏み入れた息子サムを、レトロなゲーム機「トロン」が秘密部屋へと誘う。その背後で作動する自動転送装置。瞬く間にサムはトロン世界へと放り出され、かつて父が聴かせてくれたベッドタイムストーリーを現実のものとして受け止めることになる。

と、そこへ上空から旋回して舞い降りてくる赤いグリッド線の監視艇。サムはなにも分からぬまま分厚いヘルメットを被った謎の男たちによって連行されることに。。。

ここからは『グラディエーター』よろしく、未知なる世界で囚われた者が、コロセウムに送還され、擬人化されたプログラムとの死闘を余儀なくされる。生き抜かなければここから出られない。武器は背中に装着したディスク。これを振りかぶって、バウンドさせて、相手の身体を破壊する。ルールは1982年当時の『トロン』と変わらない。

ふと見上げると、コロセウムの特等席にはヘルメットの男が鎮座している。彼こそがこの世界の生みの親にして、統治者。そしてその素顔は・・・もう話の流れからおわかりだろう、サムの父親、ケヴィン。それも20年前と全く変わらない若々しいまでの彼の姿がそこにあった(この映像には『ベンジャミン・バトン』と同じ技術がつかわれているという)。。。

とまあ、「父を超える」といった古代ギリシアからスターウォーズを経て現在に至るまで受け継がれる神話の系譜が、ストーリーや専門用語を理解せずとも映像としてシンプルに流れ込んでくる。逆を言えば、物語に真新しさはない、ということなのだが。

いや、むしろ本作は何も考えずに3Dオペラとして体感的に楽しむべきものなのだろう。今回のプロジェクトを一任されたのは36歳のジョゼフ・コジンスキー。長編映画を手掛けるのはこれが初めて。CM演出では数々の受賞を受けている逸材だが、その真価はやはり誰にも有無言わさぬほどの3D映像の専門家&研究家であることに尽きる。このエキスパートがスクリーンの暗闇から下げ膳、据え膳のごとく繰り出してくる映像演出の数々に、僕らはスクリーンの四隅の限界やこれが3Dフォーマットであることも俄かに忘れ、果てしない蛍光グリット沿いの疾走に身体を任せることになる。3Dにありがちなゴチャゴチャしたビジュアルの混濁はない。研ぎ澄まされたイメージが一点透視図法の終着地を目指すがごとく、余分なものをそぎ落とし、スッキリと伝達されてくる。

また、ダフトパンクによるサウンドトラックがテンションを高める。『トロン』世界をこれほどまでに効果的に演出するデジタル音楽は彼らにしか作り得なかっただろう。また音楽のみならず彼らのお馴染みフルフェイス・マスクのコスチュームが本作『トロン:レガシー』のデザインに与えた影響もまた大きいように思える。

『アバター』よりも進化した撮影カメラ&システムを採用した本作、その成果としては『アバター』の熱狂性や情熱とは真逆の、センスやクールさを追究したきらいもある。はたしてこの趣向は映画ファンにどう受け止められるだろうか。

ぜひ2010年という時代を総括しながらこの『トロン:レガシー』の革新映像に臨んでほしい。これは、トロン世界のみならず、3D映画の来年、そのまた向こうを見通すプレゼンテーションとしても重要な意味を持つはずだ。

(C)Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

公式サイト http://www.disney.co.jp/tron/
12月17日(金)3Dロードショー

【ライター】牛津厚信

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カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2010年12月17日 by p-movie.com

君を想って海をゆく

少年はドーバー海峡を泳いで渡る―
対岸のイギリスに暮らす恋人に会うために。


日本に暮らしながら、遥か遠方の移民や難民について想いを馳せるのは至難の業だ。

しかし、かつて『扉をたたく人』(原題:The Visitor)という名作が、その穏やかな語り口によって観客の目線を巧みにその実態へといざなったように、映画という魔法は時として、瞬く間に国境や人種、文化の壁を消滅させる力に満ちている。フランス映画『君を想って海をゆく』はまさにその魔法を想いださせてくれる、静謐な力強さに胸が熱くなる名作だった。

物語の舞台は光とトラックとコンテナと汽笛の音に満ちたフランスの玄関口カレ。イギリスの対岸にあるこの都市には大勢の難民たちがたむろし、イギリスへの密航のチャンスをうかがっている。そんな中、クルド人青年ビラルはイギリスで暮らす恋人に逢うために、荒廃したイラクから3か月もかけて、今日ようやくこの町に辿りついた。彼の前に立ちはだかるのは最後の難所ドーバー海峡。仲間と共に積み荷に潜り込もうとするが、その試みはあえなく失敗に終わる。

翌日、彼はひとつの決心を胸に町のプールへ足を踏み入れる。そこには仏頂面の水泳コーチがひとり。ビラルはなけなしの金をはたいて、なんとか2回分のレッスン代にあてる。

そう、彼はドーバー海峡を泳いで渡ろうとしている。

そのために、たった2回分のレッスンで泳ぎを習得しようとしているのだ。

妻との離婚協議中で傷心の日々を送っていた水泳コーチのシモン。これまで難民問題にまったく関心の無かった彼の心は、少しずつ動き始める。そして恋人に逢いたい一心のビラルを、本気で応援しはじめる。まるで自分の息子のように。そしてシモン自身も失いかけていたものを必死に取り戻そうとするかのように。。。

フランスで公開されるや、たった5週で観客数が100万人を突破したという。それほどまでにフランスでは難民問題が深刻化しているわけだが、本作はそれらの問題を投げかけながらも、究極的には自分と他者とをつなぐ絆を互いに手繰り寄せる、そうした人間の生き方において土台となる部分の重要性を想起させてくれる。

ビラルは本当にドーバーを渡ろうとする。彼の行く手には高波や潮の満ち引き、巨大なタンカーのもたらす引力が待ち構えるだろう。しかし、彼の目指す目標は変わらない。

このひたむきな若さを体現した新人俳優も素晴らしければ、もう一方の、重くきしんだ心の扉を少しずつ押し開く中年コーチ役、ヴァンサン・ランドンのまなざしにも圧倒される。彼はもはや青年のような意志や行動力もないし、目の輝きも死んでいるが、それでもなお心だけは死んでいない。自らを奮い立たせ、人と想いを通わせるための十分な余力を振り絞っていく。彼の表情の変化はまるで観客の心のざわめきと胎動を鏡面的に映し出しているかのようだ。

『扉をたたく人』の大学教授はここにも居た。国も言語も文化もジャンルも設定も違うが、彼らのようなごくささやかな日常の闘士はどこにだって偏在する。今日も世界のどこかで、自らの許容の限界を少しずつ広げながら、なお他者との接点を求め、扉をたたき続ける。

そして彼らの物語は、遠い島国に暮らす僕らにも、本作の原題でもある”WELCOME”の意味を、より深く伝えてくれる。

(C)2009 Nord-Ouest Films-Studio37-France 3 Cinema-Mars Films-Fin Aout Productions.
配給:ロングライド
公式サイト http://www.welcome-movie.jp/
12月18日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他にてロードショー

【ライター】牛津厚信

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カテゴリー: ヨーロッパ | 映画レビュー

2010年12月17日 by p-movie.com

『ウォール・ストリート』一般試写会 5組10名様にプレゼント!

【「ウォール・ストリート」一般試写会】
日時:1月18日(火) 18時開場/18時30分開映(上映時間:2時間13分)
会場:九段会館 (千代田区九段南1-6-5)
東西線・新宿線・半蔵門線 九段下駅4番出口から徒歩1分)
人数:5組10名様

【プレゼント応募先】
名前・住所・性別・年齢をお書きの上、下記メールにてご応募ください。
応募先:mail@p-movie.com
応募締切:2011年1月11日(火)
※当選者の発表はプレゼントの発送をもってかえさせていただきます。

アカデミー賞の栄誉に輝く巨匠と名優、そして今をときめく若手トップスターたちが豪華にしてスリリングに魅せる極上の人間ドラマ

アメリカのみならず世界の金融マーケットの中心地として歴史を刻み、幾多の成功と挫折の伝説を生み出してきたニューヨークのウォール街。『プラトーン』『7月4日に生まれて』で二度のアカデミー監督賞に輝く巨匠オリバー・ストーンが、1987年に発表した『ウォール街』もそこから誕生した伝説的な映画である。冷酷非情なカリスマ投資家ゴードン・ゲッコーを主人公に、人間の“欲望”というテーマを力強くえぐり出したこの映画は、公開当時センセーショナルな社会的反響を呼び起こした。マイケル・ダグラスに初のアカデミー主演男優賞の栄誉をもたらしたゲッコーという強烈なキャラクターは、今なお金融関連のニュースで引用されるなど、まるでこの世に実在するかのように語り継がれている。

そんな伝説のカリスマを23年ぶりにスクリーンに甦らせた『ウォール・ストリート』は、前作から様変わりした現代のウォール街を舞台に、ゲッコーと複雑な関係で結ばれたふたりの若者との葛藤を映し出す。さらに人間の強欲が招いた大恐慌以来の最悪の金融パニック勃発によって、あらゆる価値観が問い直される今の時代性を鋭く描出。『ウォール街』とは異なる視点を持つそのドラマティックな物語は、オリバー・ストーン監督とマイケル・ダグラスの創作意欲を刺激し、新たな伝説への挑戦にかき立てていった。

そしてストーン監督からの直々の呼びかけに応え、ふたりの若きトップスターがこのプロジェクトに参加した。あのスティーヴン・スピルバーグの秘蔵っ子として知られ、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』『トラスフォーマー/リベンジ』など話題の超大作が相次ぐシャイア・ラブーフ。『17歳の肖像』で映画界に彗星のごとく現れ、いきなりアカデミー主演女優賞候補に名を連ねたキャリー・マリガン。巨匠と名優を唸らせた魅惑的なストーリーに、今最も脚光を浴びるふたりの眩いほどフレッシュな魅力が吹き込まれた『ウォール・ストリート』は、まさに21世紀の今こそ観るべき極上のエンターテインメントとして完成した。

復活に賭ける伝説のカリスマと若き恋人たち
複雑な関係で結ばれ、人生の岐路に立った
3人の〈欲望〉と〈愛〉の行き着く先とは?

若くしてウォール街の投資銀行で成功を収めたジェイコブは、知的で美しい婚約者ウィニーとともに充実した日々を送っていた。そんなジェイコブの満ち足りた人生が一日にして暗転する。勤務先が突然破綻してジェイコブ自身も資産を失い、父親のように慕っていた経営者が自殺してしまったのだ。それがライバル銀行の顔役ブレトンの卑劣な陰謀によるものだと知ったジェイコブは復讐を誓い、かつてカリスマ投資家として名を馳せたゴードン・ゲッコーに接近していく。重罪を犯して刑務所に8年間服役していたゲッコーは、ウィニーの実の父親でもあった。ジェイコブは絶縁状態にあるウィニーとの仲を取り持つことと引き替えに、ゲッコーに復讐計画への協力を求めるのだが……。

ゲッコーのうら寂しい出所シーンから始まる『ウォール・ストリート』は、ジェイコブ、ウィニーという今どきの若者たちのライフスタイルを活写し、3人の人生がスリリングに交錯していく様を語り明かす。婚約者の父親であるゲッコーに大胆な“取引”を持ちかけ、それをウィニーに隠しながら危険な駆け引きに身を投じるジェイコブ。愛するジェイコブからのプロポーズを受け入れる一方、家族をないがしろにしたゲッコーを激しく憎むウィニー。そして欲望の権化として生きてきたゲッコーは、ひとり娘ウィニーとの関係修復を願いつつも、虎視眈々と復活をもくろんでいる。

入念なリサーチを行ってこの企画に取り組んだオリバー・ストーン監督の指揮のもと、マイケル・ダグラス、シャイア・ラブーフ、キャリー・マリガンが迫真のアンサンブルで体現するのは、人間の最も普遍的な本質である“欲望”と“愛”の狭間で揺らめく3人の選択と決断の物語。ひと筋縄ではいかないゲッコーの意外な行動と、人生最大の岐路に立たされて愛の強さを試されるジェイコブ&ウィニーの運命を描き、観る者の共感を誘ってやまない濃密なドラマに仕上がった。

主役3人の脇を固める顔ぶれもこのうえなく豪華だ。金融業界の強欲を象徴する悪役ブレトンを不敵に演じるのは、『ノーカントリー』『ミルク』『ブッシュ』で曲者ぶりを印象づけたジョシュ・ブローリン。ジェイコブの母親シルヴィアに名女優スーザン・サランドン、非業の死を遂げる恩師ルーに『フロスト×ニクソン』のフランク・ランジェラが扮し、『荒野の七人』などの往年の名画も懐かしい大ベテラン、イーライ・ウォラックが投資銀行の古老役で登場するのも見逃せない。


●ストーリー

2001年、証券詐欺からマネー・ロンダリング、不正なやり口により刑務所に服役したゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)は、これまでとは違う別人となって連邦刑務所の門の外へ出てきた。もはやウォール街の王ではないゲッコーは髭が伸び、髪もぼさぼさだ。彼を迎える人はだれもいない。疎遠になっている娘のウィニーでさえ姿を見せず、彼がいない間も昔のウォール街の同僚たちはますます多額になった財産作りに余念がない。8年間を刑務所の中で過ごしたゲッコーは今や一人ぼっちで、しかも組織の外にいるアウトサイダーだ。

2008年、頭の切れる若い<電子取引による>私設取引担当、ジャイコブ・ムーア(シャイア・ラブーフ)は、由緒あるケラー・ザベル・インベストメンツで大金を儲けていた。一方、ジェイクの恋人のウィニー(キャリー・マリガン)は、父のゴードンには欠けている理想主義に基づいたジェイクの情熱――環境保護エネルギーへの投資――を支持していた。

多額の負債を抱えているという噂が流れたせいで、ケラー・ザベル社の株価は突然、暴落。
ウィニーには知らせないまま、ジェイクはゲッコーに近づき、娘との仲を取り持つと申し出る。こうして、ジェイクがケラー・ザベル社没落のうらみをはらすために、そしてゲッコーがウィニーとの関係を復活させるために同盟が結ばれた。しかし、ゲッコーは本当に卑劣な皮を脱いだのだろうか?

◆監督:オリバー・ストーン(『ウォール街』『プラトーン』『ワールドトレードセンター』)
◆出演:マイケル・ダグラス(『ウォール街』)/シャイア・ラブーフ(『トランス・フォーマー』)
キャリー・マリガン(『17歳の肖像』)/ジョシュ・ブローリン(『ブッシュ』)

上映時間:2時間13分
2011年2月4日(金)より、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:20世紀FOX映画
公式サイト http://movies.foxjapan.com/wallstreet/
(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX

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2010年12月10日 by p-movie.com

東京フィルメックス閉会式(2010.12.06)

第11回東京フィルメックスはその最高賞に『ふゆの獣』を選出して9日間に渡る熱い日々に幕を閉じた。そのクロージング・セレモニーの模様をレポートする。

■猫たちに捧ぐ

受賞結果の発表はまず観客賞から。

選ばれたのは『選挙』や『精神』といったドキュメンタリーで名高い想田和弘監督の『Peace』(日本・米)だった。

日本の福祉風景にカメラを向けながらも、その内容からは次第に戦争と平和、人間の生と死といったテーマが浮かび上がってくる。

受賞スピーチにて監督は「作品が作品ですから、自分には観客賞など一生縁がないモノと思っていました。これは恐らく、映画に出演してくれた猫たちのおかげでしょう。猫たちはアナゴが大好物なので、今度、感謝の意味を込めてお土産にもっていきたいと思います」と語り、会場を和ませた。

■通訳者の涙

続いて審査員特別賞の発表。

受賞したのはハオ・ジェ監督の『独身男』(中国)だった。

北京から150キロ離れた村を舞台に、独身の中年男が若い妻をめとったことから巻き起こる波乱をドキュメンタリー・タッチで描いた作品だ。

審査員は本作について「演技経験の無い村人たちとのコラボレーションから育った高い有機性と、中国農村部に存在する人間の性欲と社会問題を中立的な視点で描いている」と高く評価した。

壇上に上がり、賞状、トロフィーを受け取ったハオ・ジェ監督は終始うやうやしく、腰の位置まで頭を垂れて謝意を示し、受賞スピーチでは開口一番「はあー…」と深い溜息。すぐには言葉の出てこない心境を全身で表現していた。

「これは私の初めての作品なので未熟な点も多々あります。でも少しだけいいところがあるとすれば、それは我々と共に良い関係、良い空気を作ってくれた村人たちのお陰でしょう。彼らに心から感謝したい」

優しく穏やかに響き渡るハオ・ジェ監督の声は、さらに「個人的なことですが…」と付け加えた。

「実はこの脚本を手掛けているのは私と母と父の3人なのですが、父は製作途中の2008年に他界しました。しかし私は製作中も、いまこの瞬間にも、父がどこか別の世界から私を見守ってくれているのを感じています」

これまで緊張のあまり目線が泳ぎがちだったハオ・ジェ監督が、次の瞬間、落ち着いた表情で、会場を仰ぎ見て、こう続けた。

「お父さん、あなたの息子は大丈夫です。これからも一緒にがんばっていきましょう」

通訳さんが喋れなくなった。ジェスチャーで「ごめんなさい」と断わって涙をぬぐい、掠れた声で言葉を訳した。

この方を媒介に、観客側にもとめどない想いが溢れてきた。

映画とはまた違うドラマが、そこに生まれていた。

■自主製作の底力

映画祭の締めくくりとして最優秀作品賞が発表された。

冒頭にも紹介したとおり『ふゆの獣』。1つの職場で巻き起こる4人の男女の激しいぶつかり合いを描いた作品だ。

審査員団からは「映画的手法を用いて心理ドラマを類稀なる強烈なレベルへと発展させている。特にカメラの使い方が際立っており、俳優たちの演技も同様に素晴らしい」との賛辞が贈られた。

登壇した内田監督は「このような事態を誰が想像したでしょうか」と反語表現で切り出し、「期間中、他の監督の作品を観るだけでも毎日が喜びであり、感動であり、勉強だった。その上こんな賞をいただけるなんて。何も想定していなかったので、今日の私は映画祭のスタッフTシャツという身なりです」と客席の笑いを誘った。

先の審査員の選考理由には最後にこうも付けくわえられていた。「この作品が非常に限られた予算の中で大きな表現力を極めていることも高く評価します」。

内田監督はその予算を「110万円です」と何の躊躇もなく暴露する。そして「日本の自主製作は本当にレベルが高いと思います。これを機にどんどんみんなが前に出てきてくれれば」とインディーズ界にエールを送った。

そして監督の呼び掛けに合わせて、客席に並んで座っていた本作の若きキャストたちが立ち上がり、壇上へと駆け上がった。その姿には見ているだけで涙が込み上げそうな青々とした新鮮さがあり、会場にはまるで親戚の子が受賞したかのような親しみがじんわりと拡がっていった。

彼らもまたとても謙虚で、客席や審査員にむかって何度も何度も頭を下げていた。キャストを代表して加藤めぐみさんが挨拶に進み出る。

「映画祭で上映していただけるだけで、皆さんにご覧いただけるだけで嬉しかったのに、こんな賞までいただけて本当にありがとうございます」

それから、ちょっと向き直って「監督にも心からお礼を言いたいです」。

「今回の映画はほとんどのシーンがアドリブで撮影されました。私たち4人の演技を信じてカメラを回してくれて、本当にありがとう!」

すべての式次第が執り行われたあと、林加奈子ディレクターによる言葉で閉会式は幕を閉じた。

「観る人がいて、初めて映画は輝きます。観る人と作る人がいて、初めて映画祭が続けられます。刺激的な素晴らしい作品がある限り、フィルメックスはつづきます。みなさん、また来年お逢い致しましょう!」

公式サイトアドレス http://filmex.net/2010/

【ライター】牛津厚信

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カテゴリー: お知らせ | 東京フィルメックス特集 | 特 集

2010年12月6日 by p-movie.com