エレクション

頂点への冷酷な道程 ★★★★
[原題] 〓社會/Election
[05/香] 1h41 1月20日 テアトル新宿にてロードショー

[監督] ジョニー・トー
[製作] デニス・ロー、チャールズ・ヒョン
[脚本] ヤウ・ナイホイ、イップ・ティンシン
[撮影] チェン・シウキョン
[音楽] ルオ・ダー
[美術] トニー・ユー
[衣装] スタンレー・チョン
[出演] サイモン・ヤム、レオン・カーファイ、ルイス・クー、ニック・チョン、チョン・シウファイ、ラム・シュー、ラム・カートン、ウォン・ティンラム、タム・ビンマン、マギー・シュウ、デヴィッド・チャン
[配給] 東京テアトル、ツイン
[宣伝] メゾン

オフィシャルサイト:http://www.eiga.com/official/election/

 香港黒社会をしたたかに描いたジョニー・トー監督作品「エレクション」。
去年の第七回TOKYO FILMexで上映された本作。ようやく劇場公開となる。

 香港最大の裏組織<和連勝会>では、二年に一度、会長選挙が行われる。上層幹部は候補者をめぐって意見が割れている。
組織に忠実なまとめ役としてのリーダーが適任なのか、力づくで牽引するリーダーが必要なのか…。
対立する候補は、“兄弟”思いで年上を敬うロク(サイモン・ヤム)と、金儲けに徹し、荒っぽい手段を使うディー(レオン・カーファイ)。
選挙戦の裏側では、欲望と思惑が錯綜し、熾烈な戦いを迎える…。

 黒社会と聞いてしまえば危険な香りがするものだが、結局彼らの欲しいものは権力の座、金、有名になりたいという不確かな位置づけのようだ。
だが彼らの構成員50,000人を越える組織の頂点である“会長”という座に就くための非情なまでに表情が人間らしさを奪う。
誰もが何を考え画策しているのかさえ解からないのだ。どちらの派につけば良いのかさえ、冷たい空気の中で抑圧された思いを抱えながらの若い衆の
表情は顔色ひとつ変えない。選挙で決まった会長職に就いた後は、兄弟の契りと<和連勝会>への忠誠を誓う儀式が行われる。
そんな儀式が行われている間でさえ彼らの脳裏に何が映るのか気づかないほど淡々と進む。伝統あるその儀式も見ているだけで圧倒される。
だが権力の座に取り憑かれた者の運命はあまりにも過酷な運命しか待っていないのである。男たちが欲しがる権力の行く末は
女性には理解しがたいものと映るかもしれないが、それがジョニー・トーの描く静かなる闘争なのだ。
本作の続編「エレクション 2」もその後が描かれてるだけに期待大である。
(佐藤まゆみ)


カテゴリー: アジア | 映画レビュー

2007年1月26日 by p-movie.com