JUNO ジュノ

16才で妊娠してしまった女子高生ジュノ。
080613_juno.jpg悩んだ末に「産む!」と決めた彼女にはとても険しいイバラの道が…なーんてありきたりな受難劇はいっさいなし。
これはジュノのお腹と共にどんどんハッピーが膨らんでいく、とびきり爽やかなポジティブ・ムービーだ。

「77年は音楽史で最も重要な年!」と言うほどパンク好きで、B級ホラーも大好き。
そんな具合に同世代とはちょっと変わった女の子ジュノは、ほんの出来心で親友ポーリーとセックスを交わし、その後、妊娠チェッカーで驚きの結果を手にしてしまう。

はじめは中絶を考えた彼女だったが、病院の前で「中絶反対!」を訴えていた同級生の「お腹の子にはもうツメとか生えてるのよ!」という言葉が引っかかり、「ツメが生えてるなんて…なんかスゴい!」と小さな生命への愛情を確かなものにする。

かくして、ジュノの出産大作戦が幕を開けた。

彼女のすごいところは、目の前のあらゆる原因と結果をポジティブに受け止め、決して安易に絶望したりしないところだ。
周りの家族や友人たちも彼女の決定を最大限に尊重してくれる。
とくに両親の応援にグッとこない人はいないだろう。
パパは何かと影でジュノを支えてくれるし、これまで年頃のジュノに遠慮して距離を置いてきた義理のママも、思わぬところで”母の強さ”を見せ付けてくれる。

そうやって生命誕生の歯車が大きく回転を始める。
こんなにも素敵な人たちに愛されながら生まれてくる赤ん坊に、いつのまにか僕らまでもが心から祝福を捧げずにいられない。

偉大なコメディ監督を父に持つ俊英ジェイソン・ライトマン監督は、多くのフィルムメーカーが”絶望”や”混沌”といったテーマと格闘するこの暗黒時代に、こんなにも笑いと愛に満ちた作品で”未来”をみつめようとした。

そこにエレン・ペイジ(主演)と、ディアブロ・コディ(脚本家)という才能が掛け合わさって、まるでひとつの生命が産み落とされるかのように、思いっきり祝福されるべき映画が完成したのだ。

とりわけ、元ストリッパーで、ブロガーでもあり、本作でオスカーを獲得した新生脚本家ディアブロの誕生には、誰もが賞賛を惜しまないだろう。

とにかくこの映画に触れると、とびきりの愛と元気をもらえる。

“誕生”とはつまり、それほどまでに爆発的なエネルギーをともなう、奇跡的な瞬間のことなのだ。

公式サイト:http://movies.foxjapan.com/juno/
6月14日よりシャンテシネ、渋谷アミューズCQN、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー
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【映画ライター】牛津厚信


カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2008年6月13日 by p-movie.com