今宵、フィッツジェラルド劇場で

最後のラジオショウとともに新しい扉へ ★★★
[原題] A Prairie Home Companion
[06/米] 1h45 3月3日 銀座テアトルシネマ、Bunkamuraル・シネマほかにて全国ロードショー!
[監督] ロバート・アルトマン
[製作] ロバート・アルトマン、デヴィッド・レヴィ、トニー・ジャッジ、ジョシュア・アストラカン、レン・アーサー
[脚本] ギャリソン・キーラー
[撮影] エド・ラックマン
[音楽] リチャード・ドヴォスキー
[美術] ディナ・ゴールドマン
[衣装] キャサリン・マリー・トーマス
[監督代行] P・T・アンダーソン
[出演] メリル・ストリープ、リリー・トムリン、リンジー・ローハン、ギャリソン・キーラー、ケヴィン・クライン、ウディ・ハレルソン、ジョン・C・ライリー、トミー・リー・ジョーンズ、ヴァージニア・マドセン
[配給] ムービーアイ
[宣伝] マジックアワー

オフィシャルサイト:http://www.koyoi-movie.com/
(C)2006 POWDERMILK PICTURES,LLC

 2006年11月に死去したロバート・アルトマン監督の遺作となってしまった本作。
アメリカ・アカデミー賞で5度の監督賞にノミネートされながらも受賞は叶わなかった。だが彼の作品の
数々を観ると、必ず多数の人間模様が細かく描かれ、観客もその中の一人になってしまう。その不思議な
感覚に陥るほどの人間性の豊かな作品が本当に最後になるとは信じられない。

 ミネソタ州セントポールのフィッツジェラルド劇場。ここで長年、全米のリスナーに親しまれてきたラジオ番組「プレイリー・ホーム・コンパニオン」の公開録音が行われようとしている。
番組の台本はなく卑屈な語り口調に定評のある司会のギャリソン・キーラー(本人)をはじめ、カントリーソングをデュエットしている姉妹(メリル・ストリープ&リリー・トムリン)、その娘(リンジー・ローハン)、下品なカウボーイソングを歌う男性デュオ(ウディ・ハレルソン&ジョン・C・ライリー)などが出演している。
ただ、いつもと違うのは、このラジオ番組を放送している局が、テキサスの大企業に買収された為、今夜が最後の放送となる可能性が高い、ということだった。
そんな背景に中で始まるラジオ番組の公開録音。人と人が入り混じり、心も入り混じり、舞台は進行していく…。
 実在したラジオ番組を司会者の本人によって紡がれる進行をアルトマン監督が面白いスパイスを利かせて感動的な人間ドラマに仕上げてくれている。
一癖も二癖もある出演陣の個性がちゃんと解かって面白い仕上がりである。
今晩で終わり、という時間の枠を超えて一つの番組の集大成は素敵なラストによって笑顔に包まれる。この瞬間を終わりにはしたくないという想いが誰の眼にも浮かぶ。色々な人生の区切りというものがあるとしたら、本作のようにNEXTに繋がる生き方を見習いたい。
そして数々の作品で幸せを感じさせてくれたロバート・アルトマン監督に改めて感謝し、自身にもNEXTに繋がる生き方をしたい。
(佐藤まゆみ)


カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2007年3月3日 by p-movie.com