島田洋七の佐賀のがばいばあちゃん

シリーズ累計670万部の大ヒットを記録、
TVドラマ、映画、舞台にもなった島田洋七の小説を、
原作者自らメガホンを取り再映画化。
爽やかな涙と笑いが溢れる人情ドラマに仕上がった。
佐賀の田舎に預けられた少年と型破りなおばあちゃんの、
貧しくも明るく楽しい日常を描く。

090430_gabai-ba-chan_main.jpg昭和33年。広島に住む昭広少年(小学1年時:森田温斗、
小学3年時:瀬上祐輝)は、母親の仕事の都合で、
佐賀のおばあちゃん(香山美子)の家へ預けられることに。
ところが、このおばあちゃんは超がつくほどの貧乏。
しかし、持ち前の知恵と工夫で明るく楽しく生きるおばあちゃんに影響され、
昭広は逞しく成長していく。

原作がベストセラーになった時、
話題になったのはおばあちゃんの逞しい人柄だった。
鉄くずを集める磁石を腰からぶら下げて町を歩いたり、
川から流れてくる野菜を集めたり。
前回の映画もその型破りな行動を重視した作りだったが、
ややオーバーな印象があった。
今回はそういう部分は控え目に、
おばあちゃんと孫の愛情あふれる生活を丁寧に描き、
ホロリとさせる作品に仕上がっている。

原作者自ら監督する場合、思い入れが強くなりすぎ、
観客が置いてきぼりにされてしまうことがしばしば。
だが、お笑いで鍛えた長年の経験からか、
初監督にもかかわらず島田洋七はそのあたりをよく心得ているようだ。
原作者らしいこだわりが随所に感じられる一方で、
観客を無視した思い込みの強さもなく、見る側にとっても心地よい。

吉行和子や泉ピン子が主演したこれまでの映画やTVドラマとは異なり、
おばあちゃん役には一見、タイプではない香山美子を起用。
だがそれが逆に役者の印象を消して”本当におばあちゃんがいる”
という雰囲気を醸し出している。

おばあちゃんの家も、セットではなく年季の入った本物の民家を借りて撮影。
その古さは”スタッフが入ったら床が抜けた”というから相当なもの。
だが、その甲斐あってCGを使った映画では得られない
“昭和の家”のリアルな空気が画面全体に漂っている。

中学で野球部に入った昭広が活躍する試合シーンも本格的。
走者が一塁から二塁へ走る場面。
普通なら細かくカットを割るところだが、本作ではワンショット。
本当に野球を見ているような感覚だ。
野球経験者を集めたからこそ可能なことで、
こんなところにも監督のこだわりが見て取れる。

物語の大筋は以前と変わらないのに涙腺を刺激されるのは、
こういった細かいこだわりから来る”本物感”の効果だろう。
母親役が高島礼子というのは願望が出すぎだが、そこはご愛嬌。
前回の映画で泣いた人も泣けなかった人も、
ぜひ映画館に足を運んで、その目で確かめてほしい。
きっと自分のおばあちゃんに会いたくなるはずだ。

090430_gabai-ba-chan_sub.jpg映画「島田洋七の佐賀のがばいばあちゃん」
オフィシャルサイト:http://gabai-ba-chan.oklife.okwave.jp/
苦労はしあわせになる為の準備運動たい!!
2009年4月25日(土)より東京:銀座シネパトス先行、5月全国ロードショー
(C) 島田洋七の「佐賀のがばいばあちゃん」製作委員会・2009


【映画ライター】イノウエケンイチ

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カテゴリー: 日本 | 映画レビュー

2009年4月30日 by p-movie.com